気候変動枠組条約第2回締約国会議(COP2)
および補助機関会合報告他
本年7月8日から19日までジュネーブ国連欧州本部にて気候変動枠組条約第2回締約国会議および21世紀における先進国による地球温暖化対策などについての新たな国際約束を検討するアドホックグループ・ベルリンマンデート(AGBM)第4回会合と2つの条約補助機関第3回会合が開催された。
今回の会合には161ヵ国989名の政府代表団(うち締約国は147ヵ国、948名)と国連機関、NGO等のオブザーバー135機関・団体、647名(うちNGOは106団体、533名)の合計1636名が参加した。日本からは岩垂環境庁長官、遠藤通
産省政務次官を始めとする31名の政府代表団とNGOの43名が参加した。
1.今次会合の位
置づけ
平成6年(1994年)3月21日に発効した気候変動枠組条約は2000年以降の具体的な対策を定めていないため、昨年ベルリンで開催された第1回締約国会議において「2000年以降の対策については1997年の第3回締約国会議での議定書または他の法的措置の採択を目指すこととし、アドホックグループ(AGBM)を設置して早急に議論すること」が決議されている。
今回はその第3回締約国会議(COP3)での採択に向けての方向付けが行われること、COP3の開催が来年秋に京都で予定されていることもあり、日本にとって極めて重要な会議であった。
2.結果の概要
以下にCOP2および他の補助機関会合の結果
について簡単に述べる。
(1) 第2回締約国会議(COP2)
7月8日にCOP1の議長であるメンケル・ドイツ環境大臣の開会宣言に引き続き、議長選出が行われ、ジンバブエのチムテングウェンデ環境観光大臣が議長に選出された。
新議長の司会で会議が進められ、7月17日、18日の閣僚セグメントには各国の閣僚級70名以上が出席し、17日から19日朝にかけて各国首席代表演説があった。我が国からは17日朝に岩垂長官と遠藤政務次官が演説を行った。(2名の演説は我が国だけ)
17日午後には各国代表によるラウンドテーブル(円卓会議)が行われ、18日には閣僚宣言が発表された。この閣僚宣言の採択を巡り、サウジなど石油諸国とロシアの14ヵ国が反対、豪州とニュージランドが一部を保留(法的拘束力)したため採択には至らず、圧倒的多数ではあるが留意(take
note)する内容となった。
(閣僚宣言ポイント)
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IPCC第二次報告書を高く評価し、その科学的知見を尊重すること。
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2000年の目標達成(1990年レベルへの削減)に向けてANNEXI国の多くが追加的な努力を行う必要があること。
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COP3において2000年以降の気候変動問題の取り組みについての国際合意が図られるように12月のAGMB第5回会合に各国が意見を持ち寄ること(具体的には本年10月15日までにQELROS(数量
化された排出抑制・削減目的)、政策・措置などについて事務局に具体的な提案を提出することとなった。)
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COP3において採択される国際約束は法的拘束力(legally-binding)のある温室効果
ガスの排出抑制・削減目的等を十分に含むべきこと。
なお、法的拘束力が閣僚宣言に盛り込まれた一方で、実施時期、削減目標、基準年など具体的な内容については決定するには至らず、今後、COP3までに決めるべき課題が多く残される結果
となった。
また、手続き規則(議定書の採択法など)に関わるビューローの構成、投票方法についても決着せず、COP3に持ち越しとなった。
(次回開催地について)
COP3を1997年12月1日〜12日の間、京都で開催することが、COP2で正式に決定された。
これを受けて岩垂環境庁長官から日本政府を代表し、「国民運動として地球温暖化対策を進めて行く方針」を述べるとともに、「第3回締約国会議において、環境保全上実効があり、実行可能性の高い法的文章が採択されるよう、日本が最大限の努力を払う決意である」ことを表明した。
COP3のホスト国として国際合意に向けた活動における日本政府のリーダーシップを期待したい。
(2) アドホックグループ・ベルリンマンデート第4回会合(AGBM4)
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議定書または法的文書のあり方について討議したが決定するに至らなかった。
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政策・措置、数量
化された排出抑制・削減目的(QELROS)、先進国の新たな約束が途上国に及ぼす影響に関するパネルディスカッションが行われ、各種の提案と意見が示された。今回はこれらについての結論が出ず、締約国は10月15日までに事務局に具体的な意見の提出を行うこと、議長は締約国からの提案等を総合した議定書の主要トピックスに関する集約文書を作成することとなった。本年12月開催予定のAGBM第5回会合で集約文書に基づく議定書の主要ポイントについて議論される見込みである。
(3) 科学技術に関する補助機関第3回会合(SBSTA3)
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IPCC第二次評価報告書の評価と利用:多くの国から報告書の成果
については高く評価されたものの、産油諸国(不確実性と強調)とロシア(政策判断するには情報が不十分と主張)の意見もあり、利用のあり方については結論が出なかった。
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通報(温室効果
ガス目録、政策/対応措置、効果の評価と見通し、資金/技術支援状況について報告書を提出)
ANNEXIカントリー:第2回通報のガイドラインの改正問題を討議、概ね修正に合意。
Non ANNEXIカントリー:通報(初回)のためのガイドラインについて合意。
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共同実施活動:報告書の様式改善の必要性が指摘され、ベースラインの算定方法等の手法について議論するためのワークショップが提案され合意した。
(4) 実施に関する補助機関第3回会合(SBI3)
3.今後のスケジュール
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AGBM第5回会合('96/12 ジュネーブ)具体的な議定書交渉が開始される見込
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AGBM第6回会合('97/03 ボン)議定書案が議論
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AGBM第7回会合('97/夏頃 ボン) 同上
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COP3(締約国会議)('97/12/01-12、京都)議定書等法的文書の採択予定
4.共同実施活動ジャパン・プログラム第1次プロジェクト認定
COP2の開催に先立ち、7月4日には共同実施活動(AIJ:Activities
Implemented Jointly)ジャパン・プログラム第1次プロジェクトの認定およびロゴマークが日本国政府から発表された。
内訳をみると植林・森林造成事業が6件(インドネシア3件、マレーシア、中国内モンゴル、ケニア各1件)、電力関係3件(家庭用太陽光発電・ミニ水力などインドネシアにおける地方電化事業2件とタイの火力発電所エネルギー効率改善1件)、小型石炭炊きボイラー燃焼効率改善(中国・大連)、コークス炉乾式消火設備モデル事業(CDQ、中国)の11件である。このように第1次プロジェクトではインドを含む南アジア地域のプロジェクトの認定はなく、ケニアの1件を除けば東アジア(含む東南アジア)地域に10件のプロジェクトが集中する結果
となっている。
ところで、今回のCOP2の会合で共同実施活動について議論されているが、このCOP2の報告資料によれば、現在すでに米国15件、ドイツ7件、オランダ6件、ノルウェー2件、オーストラリア2件、合計32件の共同実施活動プロジェクトが18ヵ国で、日本に先行して進められている。
この投資国のプロジェクト対象地域を見てみると米国は中南米(12件/15件)、欧州(ドイツ、オランダ、ノルウェー)は東欧・ロシア(8件/15件)、豪州は南太平洋地域(2件/2件)をそれぞれ重点的にプロジェクトを推進していることが分かる。これに日本の東アジア地域のプロジェクトが加わることにより、共同実施活動の活動対象地域はほぼ全世界に広がったと言える。
(二宮 嘉和)