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2000年10月号

RESEARCH PROJECT

「貧困問題とグローバルガバナンス研究」
委員会について


 グローバル・ガバナンスに関する当所研究委員会は、平成12年度で 3回目の設置となる。平成10年度は杏林大学の今井教授を委員長に 「地球規模の諸課題とガバナンス」と題し、グローバル・ガバナンス に関係ある事項を網羅的に研究した。平成11年度の「グローバリゼー ションの中の国際システムとガバナンスの課題」は、一橋大学大芝教 授を委員長に国際金融問題を初め、国際経済、国際協力問題を研究し た。

 平成12年度は、「貧困問題とグローバル・ガバナンス研究」委員会 (仮称)を設け、7月31日に第1回委員会を開催したところである。  本年9月に発表された世界銀行の「開発報告」によれば、1日2ド ル(約212円)以下で生活している人は世界人口約60億人のほぼ半分に 当たる28億人にものぼっているとされている。さらに、1日1ドル以 下で生活している人は東アジアでこそ87年の4.2億人から98年には2.8億 人に減少しているものの、同期間でサハラ砂漠の南域アフリカでは0.7 億人、南アジアでは0.5億人増加しており、地域の経済発展状況が如実 に表れている。

 昨年のケルンサミット等の議論で重債務国の債務削減が合意され (ケルン債務イニシアティブ)、先の沖縄サミットでは重債務貧困国 の多くが軍事衝突によって危機的状況に陥っていることへの懸念が表 明されたことは、記憶に新しいところである。しかし、世界の貧困問 題が先進国間で本格的に議論され始めたのは、80年代に遡る。このこ とは、84年に開催されたロンドンサミットにおいて、累積債務問題に 取り組むことが表明されていることからも明らかである。

 戦後、国際機関や先進国中心に行われてきた開発援助は、貧困問題 に関しては前述のように十分な成果 をもたらしたとはいえず、曲がり 角にきている。しかも、90年代に至り、冷戦構造終焉、経済を中心と したグローバル化の急速な進展等、新たな局面が加わっているといえ よう。特に、95年に国連によって開かれた社会開発サミットでは貧困 撲滅と開発への努力が謳われたものの、経済不況にみまわれた西側先 進国が途上国援助への余力を失ってしまったかにも見える現代では、 開発への前途には真に厳しいものがあるといわざるを得ない。

 すなわち、貧困問題に関する抜本的な解決策は未だ合意されている 訳ではなく、来るべき21世紀の地球社会における最大の課題の一つと して積み残されているという認識が9月上旬に開催された「国連ミレ ニアムサミット」でも確認されたところである。

 (財)地球産業文化研究所では、上記の動向に鑑みて貧困問題改善 の成果 を上げるためにはどうすれば良いかをグローバル・ガバナンス との関わり合いを中心に研究することとした。委員長には秀明大学  国際協力学部の大内 穗教授に就任いただき、学識経験者を中心に、 開発援助機関、産業界からも委員を招き、今年度末までに1回/月を 目途として研究を進める予定である。具体的には、21世紀における貧 困問題へのアプローチはどうあるべきか?また、それを効果 的に実施 するためのガバナンスシステムは如何にあるべきか?(貧困緩和のた めのガバナンス)等を検討したいと考えている。


検討項目(予定)

1.貧困問題へのこれまでのアプローチと問題点

(1)貧困のコンセプト
・貧困問題は、どのレベル(国家、民族、個人等)の問題なのか?
・貧困の要因は、何か?

(2)従来の貧困対策に内在する諸問題
・効率性、公平性、透明性から見た支援実施体制の問題点
・主体別の問題点(支援する側、支援される側)

(3)これまでの経験から見た貧困対策の改善の方向性

2.貧困緩和のための新しいアプローチ

(1)貧困問題への新しいアプローチ
・多様性(柔軟性)、包括性等

(2)新たな貧困緩和システム(ガバナンスシステム)の在り方
・援助の分権化、多様なアクター(NGOsや住民組織等)
・国際機関、先進国援助機関、NGOs等援助組織間の役割と連携等


(委員会事務局 増渕友則)