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グランドファザリング(排出権の無償割り当て)とオークションの相違点は、富の移転が前者では企業に、後者では政府に対して行われるという点のみで、企業の排出削減のインセンティブや、限界削減費用、排出権の価格は同じになる。 |
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米国でグランドファザリングが選択されているのは、費用効率性が高いからというわけではなく、これ以上政府にお金を支払わないという政治的な判断による。 |
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排出権の割当方法については、取引コストの点からいえば、燃料輸入業者などの上流に割当するのが効率的。グランドファザリング上流割当の場合は、富の移転が一部の企業に対してのみ行われるということで、政治的に受け入れにくいので、グランドファザリングと上流割当の組み合わせは難しい。 |
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オークションによる国際競争力の低下へ懸念は幻想に過ぎない。国内・国際価格に影響するのは限界削減費用であり、富の配分の差ではない。前述したようにグランドファザリングとオークションでは富の配分の相違はあるが限界削減費用は同じである。 |
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グランドファザリングの効率性のについては、(1) 投資の非効率性 (2) 新規参入の障害 (3) 非効率企業の存続の問題がある。排出権を無償で付与される企業と、排出権を購入する場合では資本コストに差が生じる。無償割当によって資本コスト同様、富の面でも差が新規参入者の障害になる。新参入者は既存業者よりも効率的である必要に迫られ生産性向上に影響する。排出権を無償で受け取ることのみで事業を維持するような非効率な企業が生じる。
※無償で排出権を付与する代わりに、排出権のオークションによる政府収入を租税のゆがみの修正に活用することで効率性を高めることができる |