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2006年 2号
Conference
第16回GISPRIシンポジウム
「21世紀日本社会は外国人をどう迎え入れるのか」
開催報告

平成17年度日本自転車振興会補助事業

 2006年1月31日(火)、国連大学ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区神宮前)にて、外務省と経済産業省の後援を得て、標記シンポジウムを開催した。午前の部は千葉大学大学院専門法務研究科教授、手塚和彰氏の基調講演「多文化共生社会を考える」、ケルン大学法学部教授 P.ハナウ氏の特別講演「外国人労働者の雇用と社会的公正」のあと、パネル討論−1「日本の産業構造、人口構造の行方と外国人」を行った。

 午後の部はポーランド経済・労働省労働市場局長 E.フラシンスカ氏の招待講演「EU域内の労働力移動とその将来展望」のあと、パネル討論−2「欧州移民問題から導かれる教訓」とパネル討論−3「持続可能な外国人受け入れモデル」を行った。以下にその概要を報告する。





1. 基調講演「多文化共生社会を考える」
 講師 手塚 和彰 氏(千葉大学大学院専門法務研究科教授)

 日本に住む外国人の数は徐々に増えつつありますが、実際にその数が、例えばUK(イギリス)の3.8%、あるいはドイツの8.9%、フランスの6.3%などという数に比べますと、現在のところ1.5%ですから、必ずしも多いとはいえないわけです。しかしながら、21世紀の世界は、いわゆるグローバリゼーションの時代です。日本における外国人の現在の就労や居住の実態に触れ、私たちの研究委員会が議論を積み重ねてきた、今後の受け入れの政策につき、その提言を交えてご報告申し上げます。具体的かつ実行可能な政策提言を行おうということで、皆様のお手元に政策提言をお配りしています。

 これと並びまして、移民によって成り立っているアメリカなどの場合と異なり、外国人を労働者として受け入れてきた欧州諸国、ドイツ、フランス、英国など外国人労働者の受け入れ国では、国内に住み、働き、家族で生活を営む多様な文化を持つ外国人とその国民との共存をどう作り出していくのかという点が私たちの問題・関心の中心にありました。欧米でイスラム原理主義者などによるテロの続出など、確固たる対応の必要な治安問題も頻出しております。これによって欧州諸国では、従来の外国人との統合、あるいは公共性などの政策が曲がり角に来ていることも事実です。こうした内外の変化を見極めつつ、我が国の外国人の受け入れ政策の本格的な検討を行いまた。

 まず、日本における外国人の受け入れに関する議論の進展について申し上げます。

 日本の場合、1980年代の前半までは人手不足が続くという考えがありまして、その当時はとにかく大学や高校を卒業した人に、三つや四つの会社の就職口があるという状況がありました。経済界を中心に、アジア諸国から現場の労働者、いわゆる単純労働者を受け入れるということが真剣に論じられました。

 技術水準の低い国から日本に来ていただいて、技術を学んでもらって、2〜3年で帰ってもらうというローテーションシステムをとったらどうかという意見が経済界の一部で出されました。このシステムに関しては、ご案内のとおり先例があります。期間を区切った外国人労働者の受け入れと、期間後に帰国促進をしようとした、ドイツの例があります。ご案内のように、ドイツはローテーションシステムで、トルコをはじめとして8か国から外国人労働者を受け入れました。そして2〜3年働いて帰っていただくということを考えたわけですが、3年が6年になり、6年が9年になり、9年が12年になりというようにだんだん長くなって、ドイツに永住するという結果になったわけです。

 日本に来ている外国人労働者の最初のケースとして受け入れられたのが、日系のブラジル人、ペルー人でした。1990年代の初頭にはブラジルなどの南米諸国で起きた2000%を超えるハイパーインフレーションの中で日本に働きに来たかたたち、そして現在もたくさん来ているかたたちのほとんどが、3〜4年あるいは2〜3年働いたら帰りたいと言うわけですが、実際には帰れないわけです。その一つは、帰っても仕事がない。2番めには、子供たちはこちらで育つとポルトガル語やスペイン語は忘れるという問題がありまして、彼ら自身も多くが永住権を取得するようになってまいりました。

 他方で就労資格、あるいは就労ビザがない形で入国する、あるいは入国したときの就労ビザと違った形で不法就労をしているかたたちの問題です。仕事は全くまともな仕事であるわけですが、極めて多くの外国人、特にアジア諸国から来た人たちが不法就労であるがゆえに、日本人が働きたがらない職場環境、あるいは厳しい労働、相対的低賃金、しかもなお使用者は社会保険には入らない形で、特に長時間労働しているわけです。

 しばしば問題になりますのは、雇い主が直接雇用するのではなくて、日本の労働者派遣事業法に基づいてきちんと合法的に受け入れられた派遣ではなくて、わきから入ってくる派遣、業務請負という形で多くの人たちが入っているということです。外国人の就労は、現在では製造業からサービス産業まで広がってきているわけで、こうしたグレーゾーンの背後には、極限としてトラフィッキングの問題がないわけではありません。こういうネットワークも日本の場合に相変わらず存在しています。

 以下、私たちの研究委員会は次のような形で提言と結論を出しました。

 まず、人口減少社会に対して、少子高齢化が続いているので外国人を受け入れたらどうかという議論です。確かにその時点では子供が多くて、すぐに人口が増えるように思います。しかし、親も連れてきています。子供を育てるのは受け入れた日本の責任です。そして、その親のほとんどは無年金者です。年金保険にもかからず、健康保険にも入っていない状態で、約30万人の例えば日系人の人たちが日本で働いている状況があるわけです。

 ドイツでは外国人問題についてきちんとした報告が出ています。これはリタ・ジスムートさんという元下院議長が中心でやった報告ですが、ドイツに来た外国人労働者はドイツ人と同等の労働条件で働き、社会保障に入り、そして定年を迎えて、今第2世代、第3世代になっています。第2世代、第3世代の子供の数はドイツ人と同じか、それより低いという結果が出ています。このように、ドイツに多くの外国人が入ってきて、第2世代、第3世代の時代になっていますし、フランスやその他の先進諸国も同じ状況になっています。

 第2は、日本ではいわゆる専門的な仕事、あるいは技術を持った仕事については、外国人はどんどん受け入れることにしてあります。しかし、1990年代の末からずっと議論をしてきたわけですが、結局使用者の半分近くは、とりわけ近隣アジア諸国から外国人を日本に受け入れて、日本人より相対的な人件費を安く使って、必要がなくなったときにはお引き取りいただくというのが本音です。経済界では1年数か月議論をして、その場ではそういう受け入れ方はしないということを決め、しかも報告書の中にはそのことがきちんと書かれているにもかかわらず、実際にそういう雇い方をしている使用者がたくさんいます。

 行政に対する提言の第1は、在外公館は査証の発給にあたりまして、無犯罪証明や日本語取得状況は確認していいだろうと。典型的な国はアメリカやカナダですが、英語のできない人は入ってきてはいけないと。それから、ドイツでも外国人を受け入れるときは、ドイツ語の日常会話ができる外国人を労働者として受け入れるということです。

 第2は、情報を一元化する必要があるだろうということです。これは個人情報保護がありますから、限定がありますけれども、ある省庁の持っている情報はよそでは使えないという状況です。EU諸国は国内の外国人の状況をすべて共通化する、これを2007年までに各国がきちんとするとEUの会議で決定されています。

 第3は、労働者派遣事業法や職安法への対応強化を図る必要があるということです。派遣事業法をきちんとすることは、社会保険にも入る、派遣事業主は所得税をきちんと払う、源泉徴収する、その他諸々の使用者としての責任を派遣業者は負うということです。

 第4は、教育年限にある外国人の子供の就学を保護者に義務づける必要があるだろう。外国人の子供たちはどんな学校に行こうと自由です。日本の通常の公立学校に行こうと、私立学校、あるいは外国人学校に行こうと、それは自由です。日本の文部省も規制を緩和して、外国人学校の設立を容易にしてきました。そういうことから、外国人学校もたくさんできるでしょう。ただし、日本語の教育だけは最低限していただかないと、日本では生活できないということです。

 第5は、外国人の組織的犯罪を徹底的に取り締まる必要があるだろう。もちろんそれは外国人だけではありませんで、日本人の組織的犯罪のグループとタイアップしている傾向もないわけではありません。

 次に雇用に関する提言です。それは使用者と労働者、あるいは労働組合に対する提言です。第1は外国人を雇用する者に在留資格の確認義務を課することです。

 そして私どもの一つの提言ですが、「外国人登録パスポート」によって雇用契約や就労関係を明確にし、社会保険料、あるいは税金を払っていただくということを提言しています。なぜ外国人だけなのかということですが、日本人でも恐らく近い将来、自分のIDカードは持たざるをえない状況になると思います。このことまでは私たちは立ち入りません。

 それから、外国人を受け入れている使用者は自らの利益のために受け入れているわけで、日本社会全体のために受け入れているわけではありません。外国人を受け入れて自分の企業を継続し、存続させ、そして利益を上げているからです。

 現実に一つの例を申し上げます。クリーニング業の世界では、小さい家族だけのクリーニング屋さんは、日本人女性のパートタイマーを一生懸命気を遣って雇っています。しかし、中規模以上の大きなクリーニング屋は外国人を不法就労で受け入れています。

 そういう状況が現実にあったら、外国人労働者を受け入れたほうが得ではないか。そういうことを考えますと、外国人雇用税、或いは外国人雇用基金のようなものを作る必要がそろそろ出てきているということがあります。これは先例が幾つかあります。日本はベトナム難民を受け入れてまいりましたが、この人たちの基金は非常に多くの国民の方々によって作られました。

 東欧のインテグレーションのことを申し上げますが、英国とアイルランドはどんどん東欧諸国から外国人を受け入れています。もちろん英語の教育なしです。そして、受け入れた人たちに対して、国や政府が英語の教育をしているわけではありません。実際にどこがその統合を促進しているかというと、労働組合がやっているわけです。将来は労働組合員になってくれるからです。こういう考え方が日本の労働組合にはずっとなかったということを指摘せざるをえません。

 そして第4は、日本の留学生は非常に優秀なかたがスカラーシップなしでやっていますが、その人たちを受け入れる企業が非常に少ないということです。日本に来て一生懸命働いた人たちを雇えばいいのです。それから、中国などのトップマネジメントになってもらえばいいのです。日本人は何人も、向こうの労働関係も何も知らないまま、多くの人がトップマネジメントになっていきました。ほとんど失敗して帰りました。

 最後に教育についての提言を申し上げます。留学生、就学生について、やはり一定の学力と母国からの経済援助を受けることを義務づける必要があるでしょう。受け入れ教育機関はそれに対して責任を持って教育する必要があるでしょう。それから、優秀な留学生の受け入れルートを作ることは当然です。厳格な試験を行うことが必要です。そして授業料も免除したりする必要があります。そして、外国人は学生や子供だけではなく、基礎教育として、成人でこちらに来ている方が日本語を学ぶ機会も作る必要があるということです。

 このようなことをしないで外国人を受け入れることはできないということですが、日本は鎖国をすることはできませんので、私たちのシンポジウムのテーマは結論として、21世紀に日本社会は外国人をどう迎え入れるのか。1990年に入管法が改正され、それから15年間、分かっていながら、全く日本の政府はできなかったし、各界もできなかったということがあると思います。このことを私たちは私たちの20年間の一つの結論として、明確に、提言とともに、皆さんと今日は自由な議論をしていただきたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。





特別講演「日本の産業構造、人口構造の行方と外国人」
講師 ペーター・ハナウ氏(ケルン大学法学部教授)
 

 本日は、「外国人労働者の受け入れと社会的な公正〜ドイツでの経験」のタイトルでお話をします。社会的な平等を外国人労働者に与えることは、ただ単に賃金や労働条件を平等にするだけでは足りません。こうした移民、また移民政策全てがそこに関係してくると考える必要があるでしょう。外国人労働者の社会的な立場というのは、ただ単にこうした職場の環境によって影響されるだけでなく、それ以外にも影響される要素があります。

 その他の諸国と同様、ドイツは人口の減少、また高齢化社会に直面しています。国連の人口問題部局は2000年に、ドイツの現在の人口は約8000万人ですが、それを維持するためには毎年移民を35万人受け入れる必要があるという推計を出しました。過去10年毎年20万人程度でした。それを35万人にまで増やす必要があるというのです。でも、これだけでは十分とはいえません。高齢化社会に対処するには、毎年340万の移民の受け入れが必要という非常に大きな数字が出ています。

 しかし、ドイツは現在も移民を制限するという政策に固執しています。私どものこうした政策には二つの根拠があります。一つは、過去にあまりに寛大な移民政策をとりすぎたこと、そして現在失業率が、特に外国人の間で失業率が高いということがあります。

 EUは労働者の自由な移動を謳っています。そして、EUなどどうでもいい、自分たちの仕事が重要だという人もいる訳です。雇用者にとってみれば、労働者を輸入するよりは労働輸出のほうがいいと考えます。農業者は無理でしょう。そして、IT業界も今技能者不足になっていますので、それが難しい状況にあります。恐らく多くの雇用者、特に自営業者などは、不法移民、そしてまた安価な外国人労働者を極秘裏に雇っているようです。

 2番目のトピックですが、1955年から1973年まで、ドイツは急速に戦後経済の拡大を見せ、外国人労働者で特に資格がない人でも受け入れる必要が出てきました。こうした外国人労働者を工場や店舗、その他の職場に受け入れる、融合させることは、その当時は比較的楽でした。給与条件も同じ、また労働条件も一緒であり、労働評議会や組合への参加、アクセスも認められていました。社会保険に入るということも義務づけられていました。そして第2世代、第3世代に対しても、職業訓練も与えられるようになっていました。

 しかし、外国人労働者の移住が突然止まったのは1973年で、これは第1次オイルショックを受けてのことでした。当時は失業が増え始めて、新たな外国人労働者は例外を除いて受け入れられなくなりました。しかし、以前から移民してきた労働者はドイツにとどまって、ドイツの中でどんどん家族が増えていきました。1973年から今に至るまで、ドイツ国内の外国人の数は2倍に増えました。400万から800万に増えています。これによって労働市場の状況は益々悪くなりました。外国人の失業率は16%まで上がりました。これは平均の2倍です。特に影響が強いのはトルコ人、ギリシャ人です。外国人の中でも一番その影響を受けていないのは、ポルトガル人、スペイン人です。トルコ人の失業率が21%、ギリシャ人が16%に対して、ポルトガル人、スペイン人は11%しかありません。

 独立委員会では、こうした移民政策の結果を二つの要素で結論づけています。職業的な資格がなく、あるいはそれを改善しようという興味がない移民が増えすぎた。そして、ただ単に一時的な雇用という彼らの立場にもその原因があります。しかしながら、こうした雇用状況が外国人労働者の出身国によって大きく違うことに関しては、何の理由も述べていません。私の意見で言わせていただくと、経済的、社会的、文化的、そして宗教的な要因など、ここではいろいろな要素があります。

 次に、こうした門戸を閉じるということとは逆に、一時労働者への門戸開放の維持が行われてきたこともお話ししておきましょう。永住労働移住が停止されたあとでも、臨時雇いのため一時的に入国することは許されました。数週間から数か月間作物収穫を手伝って、そのあとは自国に戻って、次の年にはまた入ってくる、年間30万人ほどの一時労働者が来ています。この間、ドイツ人の500万人は失業手当を受けているという状況が続きました。人々はこうしたブドウ畑での重労働は避ける傾向が強かったのです。例えば今年2006年ですが、政府は外国人農業労働者の10%は失業者で補おうという政策を推進していますが、これが成功するかどうかは疑わしいところがあるでしょう。なぜかというと、農園主は経験豊かな外国人労働者を続けて雇いたいからです。

 ここで矛盾があることを指摘したいと思います。移住政策が欧州連合の新規加盟国との関連で、矛盾をはらんでいると申し上げます。特別な要請がドイツ、そしてオーストリアから出されたことにより、ポーランドなど各国からドイツへの労働者の移住は最大7年まで一時停止されています。この動機はドイツの失業率の高さにあります。ドイツの一般国民が心配するのは、ドイツの雇用主が再び外国人労働者の雇用を希望する可能性です。

 東欧諸国の労働者の流入制限とは対照的に、サービスにおける自由は建設産業でのみ停止されているにすぎません。そのため自営労働者、また企業は、自らの自社人員、或いは社員を使って、ドイツ国内でサービスを提供することを自由に行っています。新しい加盟国の労働者は、その給与がドイツの給与水準を下回る場合にのみ入国が許可されています。

 それでは、ここで手短に重要な不法労働者についてお話しします。ドイツの当局は不法労働者の数さえも把握できないでおります。不法労働は低賃金であり、低賃金なのは不法労働だからです。二つの対策がここには可能だと思います。つまり処罰をするか、あるいは合法化してしまうかです。ドイツの選択は合法化ではなく、処罰でした。これは不法な労働者を雇用した雇用主に限られました。不法労働者は労災保険の保護を受けていますから、保険料を支払っている合法労働者の雇用主も悩ませています。

 それでは再評価をどのようにしたらよいか、少ない人口で社会を維持するために、独立委員会でも取り上げられていますが、もっと多くの移住者が必要かどうかには賛否両論があります。移住障壁の撤廃に関する賛否両論で最も重要なのは、賛成論としては人口の高齢化と減少に直接かかわる議論であり、量だけではなく質においても縮小しつつある労働力に代わる労働力を探すことが必要であり、特に必要としているのは若年層で資格を持つ移住労働者です。外国人労働者の需要を例えば合法的に満たせない場合には、非合法的な方法に向かう可能性があります。制約的な移住政策をより緩和するならば、不法労働者の雇用を削減させる可能性があり、これは非常に重要なポイントです。

 これは強力な賛成論ですが、同様に強力な反対論もあります。より多くの自国民の労働力を動員し、また女性の就労を増やし、高齢者が長期間仕事にとどまれるように、資格を持たない、または失業している従業員、あるいは労働者によりよい教育を与えるために必要とされる努力をやめる可能性があります。

 労働者の移住は雇用の輸出に代わるものかについても今後問われます。雇用主は低賃金の労働力を得ることに熱心です。その場合に、移住は有効な代替案とはいえません。ただ単に母国にない追加の労働力を求めるならば、移住によって雇用の輸出防止もできます。

 独立委員会は制約的な移住の原則を堅持しました。ドイツの高い失業率がそのバランスの決め手となりました。このような枠組みにあって、移住政策の概要をうかがい知ることができます。第1に、高齢者に対する配慮をする、さまざまな看護をするための外国人看護師などの人員が必要であること。そして第2に、最も必要とする職業資格を持つ移住者を望むという声があります。第3に、関係国との二国間協定に基づき、特定の国からの移住者を望む声があります。第4に、厳密に一時的な雇用、中断されたあとも繰り返すことが可能な雇用と、猶予期間後に恒久的な雇用に落ち着く可能性がある雇用との明確な区別があります。これは何よりもドイツ国内に移住する人が優先されます。この政策を実施するために関係機関との密接な協力が必要であり、また新しい法制度の中でそれを可能にしていく必要があります。独立委員会は総合的な融合、或いは統合の概念と政策を達成するために、研究部門の支援を受け、移住と統合、融合の専門的な官庁を提案しています。

 それでは、総論としてのまとめ、総括に入りたいと思います。第一に社会的な公正は所得やほかの雇用条件の公平性が必要なだけではなく、ホスト労働市場、あるいは社会への着実な統合、融和が必要です。第二に現状を考えるだけではなく、労働市場の将来の展開や発展も考慮する必要があります。第三に一時的な移住と永住の可能性のある移住を明確で厳格な線引きをする必要があります。第四に不法労働と雇用の輸出は移住の裏返しとなりかねない悪い代替措置です。また最後になりましたが、これは非常に重要な点でありますので、ぜひ残った最も重要なポイントとして1分かけてお話をしたいと思います。移住は経済的な側面だけではなく、文化、そして人道的な側面も伴うことですから、人間の移住は機械の輸出入のように扱うわけにはいきません。決してこのことを忘れてはなりません。ありがとうございました。


2. パネル討論−1
「日本の産業構造、人口構造の行方と外国人」
  司会 小野 五郎 (埼玉大学経済学部教授)
  パネラー 井上  洋 (日本経済団体連合会総務本部副本部長)
    江崎 禎英 (経済産業省大臣官房総務課企画官)
    高梨  昌 (信州大学名誉教授/元日本労働研究機構会長)
    藤正  巖 (政策研究大学院大学リサーチフェロー)
   
  (小野) それでは始めさせていただきます。討論に先立ち、最初に4人のパネラーから、このセッションの共通論題である日本の産業構造、人口構造の行方と外国人に関連する問題について、それぞれ専門に属する分野についてご教示いただきたいと思います。

 まず藤正さんから日本の人口および労働力不足について、10分程度、井上さんから、先に日本経団連がまとめたビジョンについて5分程度、江崎さんから、日本における外国人労働者の受け入れの状況についてご説明いただき、高梨さんから、人口減少社会における労働問題と雇用政策の在り方について5分程度ご説明いただきたい。



(藤正) 私の立場は人口がどうなるかという話と労働力が足りるかという話だけ、日本の人口が一体どういう状況にあるかをまずお話しします。日本のような安定した先進諸国では、経済などの機能は、必ず社会の構造、もちろん人口も含めた社会基盤から決まっているというのが基礎の論理の第1前提です。第2番は、将来の人口を決めるのは三つしか因子がない。この因子は死亡率と出生率と移動率です。ここでは3番の移動率が問題です。

 日本の総人口は今年減り始めました。これは私のモデルで推計したものです。2005年にピークが来て、あとどんどん減っていきます。減るのは生産年齢人口、20歳〜64歳までの人たちで、増えていくのは65歳以上の高齢者、それも増えていくのは2025年までです。

 日本の人口減少は二つの期に分けて定義できます。一つは2005年から2030年まで、これは人口がひどく減る時代です。高齢者がよわいを迎えて死に至る時代です。2030年以降は状況によって異なりますが、安定的に減っていきます。ここでは出生率が人口減少率に関係いたします。人口急減期においては、出生率が上がっただけでは絶対に人口が減るのを止めることができなのです。

 高齢化率は2030年ごろ1回平らになりそうです。そのあとは出生率によってこの傾向が変わっていきます。人口のピラミッドはこれが2000年で2030年、2050年となります。ごらんのように2030年には団塊の世代が通り過ぎて、ヨーロッパによく見られるような一つのピークになります。このまま将来推移するということです。

 重大な問題は生産年齢人口がどうなるかです。総人口よりも生産年齢人口がもっと減るということです。特に一方的に増えるのは65歳以上です。1950年の65歳の生理年齢は、今の85歳と同じです。ですから、15歳〜19歳までの人口と前期高齢者(65〜74歳)を本気になって使う気があれば、日本で生産年齢人口が減るということはありえないのです。

 第3の論点は、日本はこのままいくと2010年前後に生産のピークがきます。ただし、個人所得は2000年とそう変わらないということが分かっています。

 第4の論点、ここが重要な点です。日本人はどこに住んでいるかということです。欧米先進国の4〜20倍の可住地人口密度を日本は持っています。可住地人口密度約1000人というのは、ドイツの300人の3〜4倍、フランスに至っては7〜8倍になります。そこの中で我々は、世界第2の物を作り、エネルギーを使い、そして資源も消費しているわけです。食料自給率に至っては、EU諸国の5分の1から20分の1です。こういうところに我々が人を受け入れる余地があるかということもよくお考えいただきたいと思っています。

(小野) ありがとうございました。それでは井上さん、お願いします。

(井上) 人口の将来推計について、私どもが使っているデータは国立社会保障・人口問題研究所の公表データですので、藤正先生のものとは違うわけですが、私どもの問題意識も同じで、人口構造は大きく変わることを前提に、これからの経済政策、社会政策を変えなければいけないということです。

 そこで、私どもが考えている社会保障改革、或いはそれに関連する外国人の受け入れ問題の話をします。社会保障制度の改革というのは、社会保障給付を抑制する以外ないのではないかということです。2003年1月に2025年を見通したビジョンを作りました、2段階にわたって年金と医療の改革をすべきで、その中心課題は給付の抑制です。

 まず2010年までの間に、年金は2兆円、医療は5兆円の抑制です。2002年の段階で大体この二つの社会保障で70兆円ほどの給付を前提にしています。それが2025年には、放置しますと140兆円ぐらいになるので、その前段階で7兆円の抑制をするということです。

 その後、2010年から2025年の15年間に、更に年金で5.5兆円、医療で7.5兆円を抑制しても、やはり消費税率は18%ぐらい必要です。これで大体国民負担率が61.0%、目標とする50%にはかなり厳しい数字になっています。「減少する就業者数を種々の対策によって補った場合」というシミュレーションによりますと51.4%と、ほぼ目標値に収まります。

 この「減少する就業者数を種々の対策によって補った場合」というのは人口推計の低位推計を使いますと、大体610万人ぐらいこの20年間で減ります。この610万人を何らかの形で補う方法です。女性や高齢者の労働力率を高め、企業の雇い方の改革、見直しも必要と思います。もう一つは外国人の受け入れです。三つの範疇に入る方々を活用して、610万人を補う施策を執っていくべきというのが私どもの考え方です。

(小野) ありがとうございました。それでは江崎さん、お願いします。

(江崎) まず外国人労働者とか、外国人問題とか、一言で語ってしまうには実態はあまりにも複雑であることを紹介させていただきます。

 この国で正式に働ける外国人は、いわゆる高度な人材19万人だけです。実際には研修生・技能実習生といいながら、比較的単純な労働に就いている方、それに日系人の方々、留学生・就学生、不法滞在、不法就労の方と、合わせて約八十数万人がいるわけです。

 高度人材の問題は、フィリピンのダンサーとか、人身売買といわれる世界が実はここなのです。19万人、「高度」といわれながら、2/3ぐらいはいエンターテイナーが中心です。

 研修・技能実習生は、3年で帰らなければいけないこともあり、日本で働けるチャンスをもっと生かそうと、逃げてしまう方もいるという実態があります。

 日系人の方々は、中部地方を中心に非常に重要な労働力になっていますが、ここで起きているのは、子供たちの教育の問題です。

 留学生・就学生のアルバイト。犯罪が一番多いのはここです。不法滞在者の方がまだまじめに働いている実態の中で外国人労働者問題をとらまえて、どこをどう解決していくのかをちゃんと見なければいけません。

 高度の方々はエンターテイナーで踊っています。日系人は中小企業の派遣・請負を通じて大企業に行って、研修生・技能実習生は中小企業に、留学生・就学生はコンビニや飲食店のアルバイト、不法滞在の方は建設現場と、ほぼ働く場所に一定の傾向があります。

 この国の基本的なスタンスは高度の方はどんどん入ってください、単純労働に近い方は慎重に対応しますということですが、実際のニーズは全く逆です。比較的単純な労働者は欲しいけれども、高度な人は要らないといいますか、来ない。コストを払ってまで雇おうとも思わないという、悲しい実態があります。

 ここで大事なのは、最近製造業を中心に経済活動が活発になり、国内回帰で工場は戻ってきています。これを支えているのが実は特に日系人を中心とする外国人労働者です。

 なぜ日本に帰ってくるのかというと、携帯電話やIT関係の非常に早いモデルチェンジです。2か月、3か月単位でラインを変えてしまうことができるのは、日本だけです。これを可能にしているのは休日出勤、深夜労働です。これが現在のこの国の製造業を中心とする競争力の源泉になっているという実態があって、残念ながら日本人は支えていません。

 これを踏まえて、今後我々はどのように考えていくのかが、恐らく足元の問題、即ち将来的な人口構造とともに、実はどこの分野に日本人が来ないということと、外国人の方がそういうところでも働いていいというニーズがうまく合っている中で、この問題が発生しているという問題を提起させていただいて、私の説明といたします。

(小野) ありがとうございました。それでは高梨さん、お願いします。

(高梨) 私はエコノミストとして、人口減少下の経済政策の問題についての論点を触れたいと思います。ケインズが「人口減退の若干の経済的帰結」という講演をしています。一言でいえば、人口増加は貧困と悪徳という悪魔を呼び、人口減少は失業という悪魔を呼ぶと警告しています。人口減少下では経済成長率が低くなることは避けられないことです。

 19世紀の資本主義経済は比較的順調に8〜10年の景気変動で推移していくわけで、企業が自由競争をすれば、トータルとしてのマクロの経済も成長していくということで誕生したのが、アダム・スミスの唱えた古典派経済学です。

 今、日本で経済学界をばっこしているのは、新古典派経済学、正確にはシカゴ学派ですが、200年前の説を今日唱えて、自由競争で規制緩和しろという主張です。今日の社会は人口減少経済ですから、投資機会がなくなりつつあるわけです。これは成熟社会ですが。その証拠に、今余ったお金がマネーゲームに流れているわけです。人口減少経済というのはもともと労働力不足経済ではないということを冒頭で申し上げたいわけです。

 成熟した経済の中で何が必要か。日本はこれ以上、資源、エネルギーを大量消費して、産業構造を高度化する時代ではありません。省資源、省エネルギー型の高付加価値産業をどう作っていくか、これを意図的に政策的に進めることが大変重要というのが第1点です。

 その次に、人口減少下で技術進歩が大変重要ですから、技術進歩のための技術開発を政府が積極的に推進していく。ここでは大学、産業人との協働が私は当然必要だと考えます。

 最後に、単純労働には慎重に対処せよというのが政府の今日の方針ですが、専門職の外国人を積極的に活用する政策を、日本政府としても産業界としてもとる必要があります。

(小野)それでは第2巡に参りたいと思いますが、1巡目の問題に関連して、今度は外国人労働者を受け入れるにあたって考慮すべき点について、藤正さんから、外国人労働力、移民受け入れの拡大が人口減少に効果があるのかどうか、高梨さんから当面とるべき外国人労働者対策について、井上さんから高梨さんの発言に対するコメントを軸として、受け入れ企業の社会的責任の果たし方について、最後に江崎さんから受け入れにあたっての基本的なスタンスについてお話しいただきたい。

(藤正) ここでは国勢調査を3回使って、将来日本の外国人労働者の移動が継続したとして人口モデルを動かすと、一体どうなるかをお話しします。移民または労働者を受け入れるときは、政策に従って将来推計をして、それに従って色々やらなければいけません。

 ちょうど日本が入管を緩くした後の5年間、1990〜1995年の人口推移がそのまま続くとして、人口モデルを動かすと、この絵になります。2030年と2015年と2000年が書いてありますが、非常に外国人の人口が増えるということが分かります。

 ところが、1995〜2000年、日本はスランプになりました。1995年から2000年の間の人口推移がそのまま進んだとしますと、ほとんど外国人の人口が増えるということはありません2030年で、これは2%なのです。ところが1990年から95年、の5年間をそのまま推計しますと単年度で7万人入ってきただけで、帰りませんと、2030年には11%の外国人人口になります。非常にはっきりとある年齢層の人口が増えてきます。今度は外国人の団塊の世代が出てくるということです。

 もう1点何歳の人が、2030年に何%ぐらいどこの人口を引き上げるかという年齢階層のモデルを作りますと、増えるのは東京圏だけで、ほかは人口が減ります。ということは東京圏にますます労働力人口が集中するということで、高齢者は地方へ残るというイメージがありまして、都市間で外国人の住み分けが起こる可能性があると申し上げたい。

(小野) ありがとうございました。それでは高梨さん、お願いします。

(高梨) 当面の外国人労働者対策について申し上げます。日本では外国人の就労実態は行政によってほとんど把握されていません。専門職の外国人を入れても、国内での企業間移動や労働移動について把握できていません。そのような外国人たちには社会保険の適用が進んでおりません。ここで提言に書きましたように、外国人労働者パスポート制度でICカード化して、絶えず記録され、捕捉できるシステムを入れたらどうかということです。

 その次に間接雇用、偽装請負の問題ですが、私は派遣法の立法化に大変努力してきて、やっと派遣法が製造工程業務を指定することによって、ほぼ完成したと思っています。しかし、ものづくり産業への派遣の指定が遅れたために、請負と称して事実上の労働者供給事業を行っているものが製造業でばっこしています。一日軽作業請負と称して、労働者を劣悪な労働条件で酷使しているわけです。違法すれすれのことをやっていて、行政的にチェックをすれば撤退してしまうというもぐらたたき経営のような状況が今進んでおります。どのように規制するかとなれば、派遣の対象業務に指定して、法律のルールに従って事業を経営するように仕向けなければならないということです。派遣の業務指定になりますと、もし違法業務をやれば業務停止命令が出せます。ただ問題は、製造工程業務は一昨年解禁され、当面は派遣期間制限が1年で、3年後に3年になる、今1年ではなかなか派遣に切り換えにくい、相変わらず請負を続けている業者が多いわけです。来年は3年になりますから、今年を切り抜ければ、はっきりそちらのほうに切り換えが進むだろうと思います。

 それから、もう一つ私は産業界に強く要望したいのは、派遣業界はコンプライアンスという思想が大変弱い。ぜひ法令遵守に持っていっていただきたいと思います。

 その次に、いわゆる3K労働対策ですが、この提言では詳しくは触れていません。こういう労働を可能な限り自動化・機械化して縮小していくということは必要ですし、そのために政府は積極的にこのような投資促進策をやることが原則です。ところが、いかに技術進歩が進んでも、物の入り口と出口のところの3K労働はなかなかなくなりません。3K労働分野については、特にサービス業が多いわけですが、人に頼らざるをえない分野は公共政策として、ある程度賃金労働条件を保障するシステムを考えなければなりません。

 外国を旅行した人は分かっていますように、日本の都市はきれいです。公共サービスで各自治体がやっているからです。ただ過当競争すれば済むことではありません。

 私が懸念しているのはフリーターが増えていることです。どうやって正業に戻すか、普通の雇用ではとてもできません。公共サービス分野にうまく誘導できれば、年金負担もできるようになり、無年金者も防げると思います。公共サービスはそれなりの社会的価値が十分あるので、外国人に依存するのではなく、日本人でやることが必要だと思います。

(小野) ありがとうございました。それでは井上さん、お願いします。

(井上) 人口減少社会を前提に、どのような労働力を確保していくかお話したと思いますが、総人口減少、あるいは就業者数減の対策のために、外国人で人口の埋め合わせという考え方は持っておりません。むしろ外国人によって、日本が非常に多様性の生かせる社会、経済になっていく方向を目指す考えです。そうなりますと、やはり専門人材をなるべく数多くということになるわけですが、その外国人のかたがたをどういう形で処遇していくか、特に企業においてどう処遇していくかということも踏まえてまとめたもので、質と量の両面で十分コントロールされた秩序ある受け入れの施策を執るべきであるというのが一つです。それから、外国人の人権や尊厳が擁護される受け入れが必要だろう。3番めは、日本はアジアという地域にある国だということをよく意識したうえで、受け入れ側、送り出し側双方にとってメリットのある受け入れをしていこうということです。やはり有能な人材を日本が吸収するだけでいいのか、送り出した国にもある程度メリットのあるような受け入れの施策を執るべきであるということです。

 外国人が入ることによって混乱するのではなくて、むしろそれが新しい付加価値を生むような仕組みを早く作る必要があります。外国人の雇用、入国後の就労管理を徹底すべきだということを申し上げます。

 先ほど高梨先生は公共サービスにもっと日本人の若い人たちも入ってもらうと言っていましたが、現実問題としてなかなか入ってこないとすれば、質とか量のコントロールという受け入れの大原則を踏まえたうえで、海外の人に入ってもらうということになります。外国人を受け入れると、さまざまな社会的コストが出てくるわけです。ご家族を連れてくることになるので、子弟教育の問題。無保険状態での医療費の支払ということが起きます。川崎では、自治体が外国人の事故等に対応した医療費負担を公費でやっています。

 どういう形での負担を企業はすべきかということで、外国人雇用税という話が出てくるわけです。私どもも外国人雇用税については随分議論をしましたが、最終的な結論は、外国人を雇用した企業に税金を課すことになると、中小零細企業においては外国人の雇用の事実自体を隠そうとする企業、地下に潜るという状況が出てくるのではと懸念しています。従って、できれば大企業も、中小企業も含めている法人住民税を自治体がうまく配分して、外国人のための施策に有効に活用していただきたい。

(小野) ありがとうございました。それでは続いて江崎さん、お願いします。

(江崎) 外国人労働者を受け入れるにあたっての問題点を簡単に申し上げます。今までの発言で、何となく皆さんネガティブな感じを持っておられるのかもしれませんが、一方で、毎年100万人ずつ日本に来る外国人が増えています。今後増えることはあっても減ることはないだろうという前提でお聞きいただければと思います。私ども世界各国を歩いた結論は、外国人労働者問題でうまく制度を作り、立ち回っておられる国はないというものでした。幾つか受け入れにあたっての留意点を5点ほど説明させていただきます。

 一つめは、家族を呼び寄せて生活基盤を日本に置いた外国人は帰らないのが原則です。

 二つめは、成田空港に着くと携帯電話とメモを渡され、そこに電話をすると、今夜泊まる場所と明日の仕事が何とかなるシステマティックな形になっていて、働ける環境を日本が提供してしまっている。請負という形の受け入れ場所があることを忘れてはいけません。

 3番めですが、外国人犯罪の背景には、日本で生活が維持できないという重要なポイント、別に犯罪者が来ているわけではありません。この物価の高い日本で生活をし、子供を育て、場合によっては、仕送りをしなければいけない。そういう実態の中で、実は犯罪に追い込んでいるのは我々ではないかよく考える必要があるでしょう。

 そして4番めですが、労働者は労働力である前に、日本で生活する人だということを忘れた制度を作ってはいけないということです。

 外国人労働者は安いということで使い続けることは、結局は労働生産性が落ちています。3年から5年で労働の質が落ちてしまいます。実は日本のフリーターと同じになってしまいます。そういう使い捨てのような労働市場という実態がある一方で、同じ日系人でも川口の鋳物屋さん、これは中小企業ですが、はるかに日本人を凌駕する能力を備えて非常に活躍し、印刷会社でもそうですが、この人たちに頼らなければいけない実態もあります。

 要するに、日本人が嫌なことは外国人だって嫌なのだと。ただ、働かざるをえない人がいるから、この状況に甘んじて働いていただいています。その状況を我々はどう考えるのか。日本はアジアにあると、アジアと日本の経済格差は無視してはいけないということです。まずは単純労働がなくてはこの国が成り立たないのであれば、それを受け入れる一時的な仕組みとして、どう仕組むのか。それと、高度な人が来てほしいのであれば、まさに日本で生活をすることを喜んでいただけるような仕組みをどう作るのか。この2点に向かって、我々は考えないといけないと思います。

(小野) ありがとうございました。このあたりでフロアのほうに、現に外国人を雇用され、また留学生に対して奨学金制度を用意しておられる阪和興業の北社長がお見えになっていますので、現実の経営者の立場から、外国人を雇用する場合の心構えのようなものをご教示いただきたいと思います。よろしくお願いします。

(北) 経済産業省の江崎さんの最後のコメントで、日本人の嫌なものは外国人も働くのは嫌なのだと、あるいは人権の問題についても非常に的確に把握されていると思います。

 私としては、特に同じ血を持っている日系人の日本社会での受け入れが、本当に中途半端のままに終わっているということに、日本人の一人としても腹立たしい思いもしています。関係省庁は、日系人の人たちを公正な労働環境に置けるように、努力していかないといけませんし、私どももそのような方向ではやっていきたいと思っております。

(小野) どうもありがとうございました。本来このセッションで取り上げるべき産業構造問題をまだ取り上げておりません。実はこの問題は、私は司会者でありますが、私の専門に近いテーマでありますので、一言だけ発言させていただきます。

 最近外国人労働力問題については、単純労働者、高度技術者を問わず、国際競争力のような理屈をつけるケースが多いのですが、実は国際競争力は比較優位で決まってきて、単純労働力がなければ単純労働力に依存する産業が衰えるだけ、高度技術者がいなければ高度技術者に依存する産業が衰えるだけで、それ以外の産業は逆に相対的に伸びるだけの話です。問題は、日本にとって好ましい産業構造をどうやって構築していくか、その姿を描いて、それに向けて外国人をどのように受け入れるべきかという話と思います。

 各パネラーの皆さんの描いているこれからの産業構造の在り方について一言ずつ。藤正さんからお願いします。

(藤正) 実際は日本に来る外国人の方は非常に少ないわけです。ということは、日本は外国人労働者を入れても、そう簡単にはいかないことが第1点です。それは産業の面でも、社会のコストの問題でも、すべてのことに関係があるのだろうと思います。

 第2点は、東南アジアの国も、これから人口減少が日本よりも激しく進みます。労働力を供給してくれるかどうか、特に優秀な人材が必要となりますと、そう簡単には手に入らないと言いたいのです。産業構造はすなわちそういうところに非常に厳しいところがありまして、これから10年先、20年先を、しっかりほかの国のこともよく考えなければいけないと申し上げたい。

(小野) ありがとうございました。続いて江崎さん、お願いします。

(江崎) 逆の問題提起をさせていただければと思います。人口構造が本当に産業を決めるのかというところですが、問題はそうではなくて、恐らくどういう社会がどういう人を求めていくのかと。外国人労働者問題というのは、実はフリーター問題とイコールなのです。どういう労働のしかたをこの国が認めているから、フリーターが生きていける、逆にいうと外国人労働者も生きていけるのかということがあると思います。その結果として、この国に年収200〜300万の層をどんどん作っている。これがある意味で、社会構造であり、産業構造を加速させているものです。

 個人的な意見ということでお許しいただきたいが、政策を担う立場としては、この国に新しい価値を生み出す素地を残しておかなければいけません。人口がどうあろうと、残しておかなければいけないと思っています。意外に思われるかもしれませんが、ベンチャー産業が育つ所は必ず伝統産業がある所です。ベースがあってこそ新しいものが生まれる、物を作って、何かを新しく開発する素地がない所に新しいものは生まれません。

 加えて、これは非常に悩ましい問題ですが、最終的には労働分配率の問題になっていくのでしょう。私も日本じゅう数十か所を回りましたけれども、やはり実際に高い給料を払って日本人を雇おうとしても、半年でほとんどいなくなってしまいます。

 この現実の中で、この国をどこまで引っ張っていけるのか。この中に、ある意味アジアとの関係における経済ギャップのエネルギーを使って、将来の日本の姿にどうつなげていくのかというのが大事なことだと思っています。この問題の基本は、経済学の大きな問題として、労働と資本を同じ数式の上に載せているという、これが多分経済学の帰結として、安い人を使わないと競争力がないという、まさに司会者のかたがご提示になった定義になりまして、これにチャレンジしていく必要があるのではないかと思っています。

 最後にこの国の将来像として、外国人労働者を受け入れるにあたって、平準化して同じ土俵で議論する必要はないと思っています。これだけの経済格差がある中で、いかに日本をあこがれの国としてアジアの中で位置づけることができるのか。アジアで成功する人は、一度は日本に来たことがある、一度は日本で学んだことがある、その結果として、我々は今日があるという、立ち回りのしかたは、まだこの国のオプションとして残されているのではないかと。そのための制度作りをしていかなければいけないと思っております。

(小野) では井上さん、お願いします。

(井上) 日本はアジアの中の国であります。アジアと共に発展するというのが、多分一番目標としては分かりやすいものではないかと思っています。日本が果たすべき役割は、ヒトの移動、カネの移動、サービスの移動、モノの移動、あるいは情報の流通で、全てを自由化した自由経済圏を作るためのリーダーにならなければいけないと思っています。

 ただ、その実際の振る舞いは、今の日本の経済や社会の中に見られる問題を一つずつ解決していくところから始めなければいけません。

(小野) ありがとうございました。高梨さんにお願いするのですが、高梨さんは先ほどちょっと産業構造に関連するお話をすでにしていただいたところもありますので、経済界や政府、政策に対する注文のようなものを併せてお話しいただければと思います。

(高梨) どう高付加価値産業を形成していくかが最大のポイントですが、幸いなことに今の産業を引っ張っている企業のいずれも技術開発のための拠点工場を国内に立地しています。もし職業別労働市場が大変に流動化すれば、技術開発は進みません。開発技術者が流動化して社外に逃れれば、企業秘密が漏洩してしまいます、その意味で、私は長期雇用システム、雇用を安定させることが大変重要で、長期的国家戦略として、そういう産業を、やはりものづくり産業を基軸に据えながらいかなければならないということです。

 もう一つは、労働を極端にマニュアル化、簡単化、これは効率主義の極致ですが、これでは人の使い捨て経営になるわけです。能力が蓄積されるはずもないわけですから、労働力の使い捨て経営はぜひ抑制してもらいたい。これは大変必要だと思います。労働意欲を発揮して、将来に希望を持ちながら働く。こういう人間をいかに日本で育て増やしていくかが大変ポイントだと思っていますので、サービス経済が極端に進んで、人が流動化すれば済むという産業構造は決して期待できないと思っています。

 そういうことを産業界がトップでリードしていただきたいと思います。

(小野) どうもありがとうございました。私のほうで簡単な総括をさせていただいて、このセッションを終わらせていただきたいと思います。

 少子高齢化に伴う労働力不足に対処するために外国人労働力の受け入れが避けられないという議論がありますが、外国人労働力の受け入れが労働力不足時代の特効薬ではないということがよくお分かりいただけたと思います。それから、外国人労働力を受け入れるメリットは非常にありますけれども、逆に同じぐらいのデメリットもあるということもお分かりいただけたと思います。したがって、外国人を受け入れるにあたっては、どういう目的でどういう人をどのくらい受け入れるべきか、あるいは受け入れるべきではないか。そのために、制度、環境をどのように整備することが必要であるかというようなことを、あらかじめきちんと整理しておくことが必要ではないかと思います。

 これでこのセッションの役割は一応果たせたのではないかと思いますので、これをもって本セクションを終了とさせていただきます。




招待講演
演題 「EU域内の労働力移動とその将来展望」
講師 エヴァ・フラシンスカ 氏(ポーランド経済・労働省労働市場局長)

 まず最初に、私をご招待いただきましたことに対してお礼を申し上げたいと思います。
私が博士号を取ったときの論文で、ポーランドからEU諸外国へ出国する移民について取り上げましたので、今日はEUにおける労働力、特にポーランドにフォーカスを当てたいと思います。EUに加盟したのが2004年の5月、ヨーロッパ諸国は我々の労働者、つまり失業者の流入を懸念していました。というのも、ポーランドはEUの中でも最も失業率が高い状態にあります。

 過去5年間にわたって外国移民労働者の数がEU諸国で増えています。ドイツにおいては、外国人労働者の数は340万といわれています。フランスでは160万人。そして、イギリスでは120万人です。EUの雇用環境は改善しておりますが、それでもやはり国の間にかなり格差があり、また、労働市場の統合という点でも、外国人労働者においてはかなり格差があります。また男女の間の差もあります。実際に移民労働者が不法労働者としていろいろな職業に就いています。

 無条件の就労ができる権利ですが、これは各国で段階的に導入されることになります。ポーランドも7年の移行期間という合意事項に署名しました。これを「2+3+2の方式」と呼んでいます。最初の2年間においては、旧加盟国については自由に就労することはできません。しかし、それに続く次の3年間に制限を続行することを放棄すれば、ポーランド人も自由に就労することができます。また、EUの加盟国はEUに対して動議を申し立て、制限を新たにプラス2年間続行することを決定することもできます。

 旧ヨーロッパ、イギリス、アイルランド、スウェーデンといった国については、ポーランド人に対して労働市場を開放することを決めています。つまり、ポーランド人は就労許可を獲得することができ、その国の通常の市民と同じ労働者のサービスを受けることができます。また、ドイツとオーストリアについては、すでに7年間にわたる移行制度を導入することを、ポーランド人に向けて、発表しております。

 ポーランド人にとって、こういった労働規制が完全に廃棄されるのは、2011年までですが、恐らく2009年ぐらいになると思います。そうなれば、ポーランド人労働者もその地元の労働者と同じ権利を法的に有することになります。

 EUに我々が加盟してからの情報はまだ十分ではありませんが、加盟国の経済的な条件を満たすことが重要とされています。定期的に労働する人たちや季節労働者は言語の問題を抱えています。

 経済的な理由で移住先として、一番人気が高いのはドイツです。2005年1月から7月までの間に27万2000件の就労許可が発行されています。農業やホテルといった季節労働が中心です。イギリスでは、16万人以上のポーランド人が2004年の5月から9月にかけて合法的に雇用されているという数字があります。

 こちらにあるのがEU諸国のポーランド人の情報です。

 例えばアイルランドのポーランド大使館の統計によりますと、およそ7万人から8万人のポーランド人がアイルランドで働いているといいます。イタリアですが、2004年1月から2005年8月までに、およそ6万人のポーランド労働者が登録されたという当局の情報があります。次にオランダですが、2万人以上のポーランド人が就労許可をオランダで得ています。ノルウェーはEUの加盟国ではなく、経済圏の1国ですが、2004年5月から12月で、ポーランド人の就労許可件数が1万3000となっています。

 次にスペインですが、1万4000件以上の就労許可がポーランド人に与えられています。スペインはポーランド労働者の中でも非常に人気のある国で、特に女性に人気があります。ポーランド人の女性にイチゴを摘むというのが非常に人気のある仕事になっています。

 スウェーデンはポーランドに対して開放した労働市場を持っております。2004年5月から12月の間に2000以上の居住許可がポーランド人に対して発行されました。

 オーストリアです。1万1000件以上が労働許可を得ています。1300以上の労働者がキプロスに行っています。

 チェコ共和国では、1万以上のポーランドからの労働者が見られます。デンマークは、約2000人のポーランド人がこの国で働いています。

 フランスです。二国間での合意がポーランドとフランスの政府の間にあります。2005年1〜5月の期間で季節労働者が約1000人、304人が無期限の労働契約による雇用、そして230人がその他という分類になっています。特に農業関係に従事する季節労働の人気が高いといえます。

 次にEURESというネットワークのお話をしておきましょう。EUの域内での雇用関係の情報を提供してくれるもので、こうした移民労働者に対してのサービス情報を提供します。そして、基本的にはこうした自由な労働者の移動を促進しようとしています。

 2004年5月1日EUに加盟してから、voivodshipという労働関係の局、六つの管区があり、そこにvoivodshipというオフィスがあります。地方のオフィスも6か所あって、そこにEURESのネットワークのサービスがあります。

 ここまで雇用関係、海外での労働関係というところのお話をしてまいりました。このシンポジウムの中でいちばん重要なのは、こうした海外での労働と思います。また、一時的な季節労働者などがどのような形で行くかということでしょう。ポーランド人がEU域内で働く場合、いちばん問題になるのは外国語の知識不足があります。

 最後に、将来の見通しをお話ししましょう。EUに加盟後、いろいろな形の可能性は出てきていると思います。そして、特にこうした労働市場で非常にアクティブな人々や、あるいは中には失業者が海外で職を求めるというところもあります。こうした労働市場は、EUの中でもいろいろ課題を抱えているところもありますが、ポーランドから海外への労働者はこれからも増えていくでしょう。そして、こうした移民が進むことによって、労働市場でも国際化が進むのではないか。そして、ローカルのマーケットで資格を必要とするような職業にも、可能性が広がっていくかと思います。

 今のところは季節労働が、ポーランド人では専ら海外での労働の主な形態ですが、こうした労働市場の国際化というのも非常に重要だと思います。これが進むことによって、給与、またEU全体での労働条件の平準化も進んでいくのではないかと思います。

 私からは以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。



 
  パネル討論−2
「欧州の移民問題から導かれる教訓」
  司会 池上 重弘 (静岡文化芸術大学文化政策学部助教授)
  パネラー 手塚 和彰 (千葉大学大学院専門法務研究科教授)
    藤川 久昭 (青山学院大学法学部助教授)
    エヴァ・フラシンスカ (ポーランド経済・労働省労働市場局長)
   
  (池上) プログラムを一部変更して、手塚先生の基調講演、およびハナウ先生のご講演、そしてパネル討論−1を基に皆様からのご質問に答える時間を最初に取りたいと思います。

 多くは基調講演に関るものですが、幾つか私のレベルでお答えできるものも有ります。

 まず、「現在日本国籍と外国籍は、住民登録、外国人登録と別々の制度になっています。今後日本の外国人人口が欧米並みの3〜9という高さになれば、住民登録の中に外国人を取り込むことも必要ではないでしょうか」というご指摘です。これは全くそういう趨勢に行くであろうことは藤正先生のご報告どおりで、当然だろうと思います。

 その次に、「先進国の外国人の比率が思ったほど高くないが、これはどうしてか」という質問です。イギリス、フランスなどは、植民地から来た人には市民権を与えているので、実際に町に行くと、体感的にはもっと外国人比率が高く見えるのですが、旧植民地出身者の市民権取得によって、統計上は先ほどのような数字になっています。

 それから、これは大学院生からのご質問です。「アメリカに行った留学生たちはアメリカがいかに素晴らしい国かを語る。一方、日本に行った人たちは日本で幾ら稼いだかについてしか語らない。こういう状況をどう変革すべきだと思いますか」というご指摘ですが、アメリカは能力があれば素晴らしい国であるのに対して、日本は平均的に、平準化していくというような国の在り方が随分影響しているのだろうと思います。

 次に経団連の井上さん。「日本経団連では、日本人が就きたがらない職について外国人の受け入れを主張しています。それが将来的に労働力の不足が予想される分野になると思いますが、なぜ日本人が就きたがらないのかを分析することなしに、外国人労働者を受け入れるのは危険ではないでしょうか。日本人が就きたがらない仕事は外国人も就きたがらないと、江崎さんもおっしゃっていましたが、どうでしょうか」という質問です。
   
(井上) 日本の言葉に「職業に貴賎はない」と。要するに、まず日本の若者が色々な仕事にチャレンジしてくれるということが前提にあるべきだと思います。

 ただ、少子化するということは、甘やかされた子供たちが増えているのも事実です。そういう人たちが、いったん職に就いてもすぐ辞めてしまうという状況を改善する努力をしながら、至らざるところは外国人にも補ってもらう必要はあるのではないかと思います。

 ただ問題は、いわゆる単純労働者の世界ですね。例えばごみ収集とかいったものに対して、単純に外国人にやってもらったらいいのかというと、そうではない。やはり我々がベースになる社会的な仕事はやはり日本人で賄っていくことが必要だと思います。

(池上) 井上さんにもう一つ。「日本企業は先進国の中で最低レベルの社会保障負担しかしていません。外国人労働者を含め、人への投資をどうお考えですか」という質問です。

(井上) 色々認識の違いはあるかもしれませんが、経団連が今目指している社会は、中負担・中福祉の国です。高負担・高福祉の国は、超高齢化社会では難しいということです。法人税の負担水準は欧米先進国並みで、社会保障に関るコストは法人と個人が負担しているわけですが、法人が負担している部分が欧米に比べて少ないわけではないと思います。

(池上) ありがとうございます。次は、「人口減少期での経済活動の対応のビジョンが見えてきません。日本での活動が不利になれば、容易に活動の場は海外に移り、日本は空洞化するでしょう。ぜひ納得できる将来の産業のビジョンを作って欲しいです」ということですが、井上さんと江崎さんで何か追加したいことがございますか。

(井上) 2003年1月に発表した経団連のビジョンの中では、「メイド・バイ・ジャパン構想」を持っています。例えば中国に日本の企業が出ていって、開発をし、生産をする。そこの投資収益を何とか日本に還元させ、そのお金で人材の育成、研究開発をし、新しいお金の循環を作る必要が出てくると思います。海外に出ていって、日本だけ空洞化するというシナリオを我々は全く考えていませんで、何とか海外で稼いだお金を日本に戻してくる。

 こうなりますと、税制面での対応が非常に重要になってきます。向こうでは税金が安くて、日本では税金が高いということになると、海外で稼いだお金が日本に戻ってこなくなるわけです。何とか日本に戻して、世界の最先端を行く製品開発につなげていくというシナリオを作りたいと思って、そういう提言をしています。

(江崎) まず、最初に、人口減少を皆さん心配しすぎているのではないかと。恐らく労働人口も減るのですが、一方でこの国は300万人の失業があります。空洞化のほうがはるかに怖いと思っています。やはりこの国は技術がキーであると。それから、実は日本人が嫌なことは外国人も嫌なのですけれども、外国人は即今嫌なのではなくて、しばらくたってから嫌になる。それまでのギャップでこの国の経済を引っ張りながら、外国人でつないでいる間にこの国の構造を変えなければいけないと思っています。

(池上) ありがとうございます。もう一つ「留学生に対する厳格な試験というのはどういうものをイメージしているのですか」ということですが、端的にいうと、日本語および学力を求めると。その詳細はともかく、その2点です。
   
 それでは、手塚先生に答えていただくのがよろしいかと思うものが数点あります。
   
 「外国人が日本で永住するために日本語を勉強する体制を整えるとのことですが、母国に帰りたい外国人もいるので、そのためには母語を持つ人たちでコミュニティーなどを作って、日本に適応しつつ、母語を忘れない環境を作る必要もあるのでは」という質問です。

(手塚) 今から27年前、日本にベトナム難民の方が来ました。その内のかなりの方はアメリカやよその国に行っていますが、日本に定住して、大学を出てお医者さんになった方も多くおられます。そういう方達のために、市民の協力がたくさんあったわけですが、そういうものが根底にないとだめだと、私は基調報告でも話したと思います。

 第2には、日本政府は、今後は大人も子供も含めて、日本に来ている外国人の方達の教育或いは日本語について、もっと積極的にきちんとしたシステムを作ることを政府で考えなくてはいけないであろうと。外国人のための政策というのは、幾つかの省庁の縦割りではだめで、きちんとしたものを作るということです。

 それから、例えば日本語のことですが、アメリカの市民権を取るときは、カルタみたいなカードがありまして、アメリカの国旗は星が幾つあるとか、単純なことから始まってたくさんあります。私はそれを全部解いてみましたけれども答えられません。ですから、私はアメリカの市民権は得られないと思います。だけど、アメリカのような移民の国は色々な国からたくさんの人が来ますから、その人たちのために徹底的にアメリカを知ってもらうということをしていると思います。日本は何となしにいい国だということで入ってこられる外国人の方がおられるけれども、それではどうかという感じがします。

 ベトナム難民のサポートをされてきた福平さんにお話を伺いました。ベトナムから来た方が30年たって、日本に定住して、日本はもっとひどい国だと思ってボートピープルで来たけれども、住んでみて、まあまあだったかなという声のほうが多いかなというのが彼のお話でした。今後は色々な国の方達が日本にいらっしゃる、そうなって欲しいと思います。

(池上) はい。では次に、「提言そのものは具体的で中身のある項目もあり、評価ができます。しかし、当面の問題解決ということに力点があって、10年先、20年先の社会の在り方を明示するまでには至っていません。共生や統合といったことについての議論をしていないというのも、どうしてなのでしょうか。今、日本に求められているのは、受け入れ後の社会のモデル、その在り方なのではないでしょうか」という質問です。

(手塚) 「共生」という言葉がありますが、これは英語にできません。ご案内とは思いますが、イギリスのヒースロー空港の空港労働者は、決してきれいな仕事ではないです。だけど、そのヒースロー空港を安く上げるために、インド人とパキスタン人を受け入れました。インド人は商売のほうが上手ですから、今インド人はほとんどいません。パキスタン人がメインです。これを多文化社会とイギリスは言っているわけです。

 それから、「共生」という言葉と並んで振り回される言葉は「国際化」という言葉です。例えば竹島問題のように、国と国が衝突します。その結果、お互いに話し合って理解しあうことをインターナショナリゼーションというのです。ところが、日本の場合に「国際化」という言葉が10年前、15年前にはやりました。「国際化」を何と訳したらいいかというと、ないのです。今、私たちの目の前にある言葉は、グローバリゼーションしかないのです。

 日本経団連は、日本はアジアの旗手で、アジアの中心になって推進すると言っていますが、それも今怪しげになっているわけです。要するに、中国には日本の10倍の13億の人口がいます。その1割が日本の人口と同じなのです。その人たちがかなり優秀な人たちで、そのまた1300万人のものすごいトップクラスの人がいたときに、おのずから将来的な方向として、日本はよほど頑張らないとだめだと。

 将来像を示してくださいという質問ですので、結論を申し上げます。「フリーター」という言葉は「フリー・アルバイター」という言葉のフリーは英語でアルバイターはドイツ語が縮まってフリーターになった、私はいちばん使いたくない言葉です。それは親のお金で家にいて、小遣いだけ稼いでいる連中なのです。親のポケットは高度成長期の日本でたくさん膨らんでいるのです。しかし、これが10年後にはなくなりますから、10年後の若者はそんなことをやっていられません。ですから、どんな仕事でもやらざるをえないという具合になると思います。それが日本の将来の姿ということですね。

(池上) 元来の我々のセッション、パネル討論−2「欧州の移民問題から導かれる教訓」というトピックに入っていきたいと思っております。

 ヨーロッパにおける人の移動は別に現代に始まったことではありません。しかし、今日の移民問題に直接大きく関係してくるのは、やはり戦後の外国人労働者の流入であろうと思います。ヨーロッパの研究者の中には、EUの中での移民問題の論議が一面的であると指摘するかたもいらっしゃいます。つまり、EU内での移民に関する議論をする際に、いわゆる不法移民の問題や、移民数の制限・規制をめぐる問題が非常に大きな関心事になります。ところがその一方で、移民たちの置かれた社会的な状況、経済的な環境、あるいは移民に対する人種差別といった問題は、なかなか議論にならないという指摘です。

 私たちは、「欧州の移民問題から導かれる教訓」と題したこのパネル討論−2において、主として次の二つの側面から移民問題を考えたいと思います。まず第1は、外国人労働者の送り出し国と受け入れ国の双方にとっての意味合いということです。

 それからもう一つは、先ほど手塚先生の回答の最後にもありました、社会統合の問題です。移民が移民先の国で、働くために行ったとしても、それはおのずと定住化・永住化が進んでいく。そして、働きに行った先の国で生活をしていく、その基盤をどうやって作っていくかという社会統合の問題。この2点が第2セッションの主たる問題点と思います。

 ほぼ20年から30年遅れて、まさに移民問題を経験しつつある日本ですが、今後を考えるうえで重要な視点を提供するはずだと思います。

 それでは、最初に手塚先生から、2004年のEU拡大以降の動きについてお話をいただきます。そこでは新加盟国から旧EU諸国への流れと、それに伴う送り出し国側の経済発展、受け入れ国側の社会統合といったことが問題となることと思います。

 その後、フラシンスカ先生から、EU域内の労働移動に伴う問題を論じていただきます。ポーランドの動向から日本への示唆を頂くことになると思いますが、ぜひ社会統合という側面についても、送り出し国の側から、自国民が行った先でどういう問題に直面しているかもお話しいただければと思っております。

 さらに藤川先生からは、欧州での事例を交えつつ、外国人労働者の就労や生活に伴う問題点について、労働法の専門家としての視点からご指摘を頂きたいと思います。
   
 では、手塚先生よろしくお願いします。

(手塚) 人の移動というのは・・・。例えばスウェーデンという国があります。非常に寒い国で、夏行って「これは天国だ」と思う人はばかで、冬にはマイナス20度、30度です。それで南の国の人は、あの冬を1回か2回経験したら、もうこの国には住めない。少なくともストックホルムに集中して住みたいと考えるわけです。カナダも同様です。
   
 例えばカナダは移民の国で、カナダ人はアメリカ人を大嫌いなのです。しかし、カナダでいちばん優秀なお医者さんはみんなアメリカに行ってしまうのです。

 中国の統合のときに香港から豊かな人たちが行きました。今現地で伺いましたら、「もうだれもいません。香港に帰るか、アメリカかどこかへ行ってしまいました。」という現実。

 どうしてか。カナダは1960年代まで、いわゆるオーストラリアと並んで白人しか受け入れませんでした。そしてその後、日本人でもアジア人でも、カナダへ行っているのです。東海岸、バンクーバーとか、あちらのほうに行っているのです。だけど、その人たちは、何をやるか。ポイント制です。英語ができること、ちゃんとした職業能力があること、その他諸々ポイント制。では、その人たちが高い仕事に就けるかというと、就けません。タクシードライバー、クリーニング屋さん、その他ホテルのバックヤード。

 それと同じようなことが、実はアイルランド。アイルランドは400万人しか人口がおりません。しかし、10万人を超えていると思いますが、ポーランドから行っています。

 今アイルランドはバブルですから、ホテルはものすごく高いのです。日本の帝国ホテル並みです。それで、朝起きて部屋に来た人に話しても全然分からない。要するにポーランドの方です。イギリスもアイルランドも最低賃金があります。英国の最低賃金は7ユーロ40だったかな。しかし、彼らは、絶対に7ユーロ40などもらっていないと思います。
   
 アイルランドが今ものすごくよくなった。ITがなぜよくなったかというと、税金の関係があるのです。シリコンバレーでやっているよりも、アイルランドでやったほうが、税金が安いからです。お金と物と人とが、グローバリゼーションでつながるわけです。

 今から十数年前にスペインとポルトガルがEUに加盟しました。そのときはたしか3年間だったと思いますが、旧EU諸国に、働くためだけに入ってきてはいけないということに、特に大陸諸国はいたしました。しかしながら、スペインでは、セアトという自動車会社がありますが、これが非常に隆盛を極めています。それはどうしてか。自動車産業でも技術の固まりです。それはもうITから全部あるわけです。そういうものを持って帰って、技術がちゃんとやっているわけです。

 だから、ポーランドに3800万人のドイツや英国やアイルランドに行った人たちが帰ってきて、例えば、かつてはポーランドにはヨーロッパ最大の造船所があったわけです。それをどういう具合に立ち直らせるか。

 ドイツの人たちは、ポーランドの人たちと自分たちは、言葉は違います、文化も違います、だけど、本当、共通ではないかと。だから、全然違った国から来るよりは、将来的にはポーランドのかたがたくさん来て、皆さんが大好きなサッカーのリトバルスキーはシンデレラボーイで、彼のおじいさんかひいおじいさんはポーランドから来た方ですね。

 ですから、そうなっていただきたいという具合に日本も考えている。だけど、そのための間を埋めるのは非常に大変だということを申し上げて、もうこれ以上申し上げません。ありがとうございました。

(池上) ありがとうございます。かなり概観的なお話ながら、問題を指摘されておられたと思います。それでは、フラシンスカ先生、よろしくお願いします。




(フラシンスカ) ヨーロッパにおいては大きな問題として不法就労があります。ポーランドでも、例えばベトナム、ウクライナ、ベラルーシなどからの不法就労者が問題化しています。ポーランドの合法的な労働者にとってもそれは問題です。ヨーロッパのほかの国でもそういう問題は色々あります。例えばドイツでは、ポーランド人が不法就労しているという問題もあります。就労許可を得るのが難しいところにも問題はあると思います。
   
 別に給与の問題があります。ドイツ人が10ユーロだったら、ポーランド人は多分3ユーロぐらいというように、賃金格差が大きいのです。それから、ポーランド人は就労許可には合意・契約が必要だということを知らずに海外に出てしまうということもあります。ですから、ポーランドでは今そのような問題への対処を進めています。

 今イギリスのメディアでも、ポーランドからイギリスに行った労働者の不当な扱いが取りざたされてもいますし、労働当局もそうした問題に関して取り組もうとしています。こうした労働市場を移民に対して、特に東欧、中央ヨーロッパからの移民に対して門戸を開くということを考えた国でも、まだまだこのような問題があります。

 ポーランドがEUに新規に加盟してからまだそれほど時間がたっていません。今海外に行っている人間が、今後定住を望むかどうかはまだ分からないと言えるでしょう。私は博士論文でポーランドからの労働移民に関して質問調査をいたしました。いずれはポーランドに戻ってきたいと大半の人が考えています。ある程度お金を稼いだら、もう帰ってきたいと。失業している人もそのように答えている人が大半でした。

 今海外での雇用を求める傾向がだんだんと高まっているということもあります。しかし、これは受け入れ国のニーズによって決まります。これは国内の労働事情にもよるでしょう。例えば農業をやりたくない、国内に農業のなり手がないという場合です。ですから、こうした労働市場における格差(ギャップ)、そして労働者間の格差は、いろいろな側面から来ている問題でもあります。EUの加盟国は、このような労働市場における問題、また失業という問題を抱えながらも、海外での雇用を求める労働者は今増えています。ある意味、海外の人が入ってくると国内の雇用が侵食されるところから、保護される傾向です。

 ポーランドの労働市場への移民の影響はどうかということがあります。まだポーランドでこうした海外からの移民によって失業率が大幅に上がるというような問題は起きておりません。最大規模の移民がまだ訪れていない状況です。

 それから失業者の大半は、そもそも仕事が得られない人です。資格がない、外国語の能力がない、文化社会的な要素もあったり、それからまた、アパートを借りて住んだりというような、職に就くためのコストに耐えられない人もいます。そのようなところから、失業者も含めて海外への季節労働のようなところに人気が高いという事情もあります。

(池上) お話の中ではポーランドに入ってくるニュー移民の話もありましたが、まだそれはさほど大きな影響をポーランド社会には及ぼしていないということでした。それでは藤川先生、お願いします。
   
(藤川) 手塚コメントの補足を行うために、11月に調査に出掛けたオランダ、フランスについて、簡単なブリーフィングを行うことを目的としております。移民の状況と政策、社会へのインパクト、行政の対応としての特徴の3点についてお話をしたいと思います。

 まず、フランスおける移民の状況と政策です。フランスは、移民およびその家族の社会統合について、諸々の試みを行ってきたことでも知られています。フランスにおける移民のカテゴリーは、旧植民地からの移民、発展途上国からの主に未熟練労働従事者、あと難民の三つといわれています。現在は、発展途上国からの移民を中心に多様化しています。

 フランスの戦後における移民政策ですが、基本的に移民人口はそれほど急激に増加したり減ったりしているわけではなさそうなのですが、移民政策は変遷しています。戦後から1965年までの経済が好調な時期は、積極的に受け入れました。次に1974年までの移民流入のコントロールを推進した時期は、そういう思考をしつつも決定的な対応が執れなかったといわれています。最後、現在に至るまでですが、2000年に入ってから政策にぶれが見られます。経済的な不調と政治的背景による、フローからストックへ、モビリティーからインテグレーションへという政策変更の流れです。特に、違法移民が合法移民の統合を妨げるという立場で政策が執られているといわれています。

 社会へのインパクトといった点ですが、調査で手に入れた資料によって面白いなと思った点、特に社会・政治的インパクトについて指摘したいと思います。

 初期の段階は、外国人で、かつ労働者としての移民のプレゼンスがメインでした。すなわち、典型的なタイプとしては未熟練労働者、家族なし、帰国予定、労働者階級としての移民で伝統的なフランスの労働運動、社会への批判者であった。移民の受け入れが成熟するに従い、この社会的・政治的インパクトが高まるということです。移民が社会的要求、政治的意見表明を積極的に行い、その意味でフランスの社会・政治に影響を与えています。

 第3段階では、移民の第2世代が、ローカル・レベルの政治への積極的参加を行っています。その結果、反人種差別主義、市民的権利の獲得、社会的・文化的統合を主張し、ローカル・レベルでの政治に積極的に参加しているといわれています。そして、このような勢力がフランスの政治社会では一定の役割を有しているといわれております。

 最後に、フランスの行政的な対応として特徴的だと思われる点ですが、ご案内のとおりフランスは、移民およびその家族の社会的統合、就労管理等に、諸々の試みを行ってきたことでも知られています。

 私が調査して思った感想ですが、フランスにおける移民に関する各種管理は、ニュートラルな意味ですが、治安、社会問題としての対応という管理の特徴にあると思います。これらに共通するのは、基本的に厳罰主義、形式主義です。日本の行政が、行政指導など柔軟な措置による対応を行っていることを考えれば、非常に対照的な対応と思います。

 オランダにおける移民の状況と政策ですが、1960年代初頭からオランダは、基本的には移民受け入れ国になりました。移民受け入れ国として前面に出てから、移民の社会経済状況は改善されつつも、生活条件、労働条件などはオランダ人ネイティブとは比べるべくもない状況であったと調査は語っています。一方、移民に対する国家・国民による福祉の負担が非常に重くなっています。このことから、オランダは、近年移民受け入れ制限策を執っています。すなわち、マスとしての移民受け入れから、セレクトされた移民受け入れという流れです。ただし、少子高齢化に伴う労働力減少に対応するため、現在の政策の妥当性が議論され続けているとのことです。

 オランダでも移民の社会・政治へのインパトクは語られています。
   
 我々が訪問して発見できた調査結果は、EUからの移民労働者の存在は、いかなるスキルレベルにおいてもネイティブのオランダ人の賃金には影響を与えていない。しかし一方で、EU以外からの労働者、低熟練労働者に関しては負の効果が生じており、高い熟練労働者にはポジティブの効果が、そして中熟練、中程度の熟練労働者には相関関係は見られないとしています。ただし、基本的には、移民による労働市場における賃金などへのインパクトは、それほど大きくないと、その調査をした学者は結論づけています。

 オランダは労働市場が狭いこともあり、こういった調査がやりやすいと思われますが、自国の労働市場へのインパクトという点を常に注目し続けることは不可欠だと思われます。

 最後に、国家の対応として特徴だと思われる点は、イミグレーション・チェーンという一元的情報管理システムを導入し始めたことです。このイミグレーション・チェーンには移民帰化局、外国人警察、国境治安警察、外務省、外国人会、法律扶助協会などなどが関与しております。日本でこのような一元的情報管理システムを執るうえでは非常に役に立つ先例ではないかと思っております。

 情報の維持管理に責任を持つ組織は、一応各種機関からの独立性を維持しています。情報の収集については、いわゆる川上から川下に流れるようになっています。これがオランダの特徴です。

 最後にまとめですが、フランス、オランダの経験は簡単に我が国に輸入できるものではありません。社会的な状況、経済的な状況、文化的な状況も全然違います。ただ、表面的なまとめではありますが、二つ申し上げたいと思います。

 フランスの経験から学べることは、社会経済のアクターとして移民の重要性が、移民受け入れの成熟度が高まるにつれて発展することでしょう。フランスの労働基準監督署の就労管理はけっこう実効性はあるといわれています。ただ、移民の社会的、経済的なプレゼンスと影響力が高まっている反面で、行政的な対応に質的な変化が見られない。このようなギャップと最近起きた諸事例を重ね合わせるとき、何らかの示唆が読み取れるのではと思うわけです。

 次に、オランダの経験から学べる点は、住民管理、就労管理、出国管理の一貫性を模索するための前提となる、一元的情報管理の試みを先例として学ぶべきである。このように私はまとめました。

(池上) ありがとうございました。残り時間が5分と限られてきましたので、私からフラシンスカ先生と手塚先生に質問を投げかけたいと思います。

 まずフラシンスカ先生への質問の第1は、ポーランドからの出移民についてのジェンダー面の特徴はどうなっているかということです。

 二つめの質問は、定住の傾向はやはり進んでいくと思うのですが、その際に、送り出し国の側で、どういう受け入れ国での社会統合政策の転換を望でいるかということです。
   
 それから、手塚先生には今の質問との関連になるのですが、ヨーロッパの中で特にドイツの場合での社会統合政策から私たちが導く教訓を、ポジティブ、ネガティブ含めて、それぞれ1〜2分でお話しいただければと思うのですが、いかがでしょうか。

(フラシンスカ) まず移住労働者ということですが、農業は失業者が多いので、農業分野、そして農村からの移住労働者が多いですし、それから若者も多いです。ポーランドでは25歳以下の年齢の労働者の間の失業率が39%です。

 また、ジェンダーを見る限りは、やはり比率としては、男性のほうが女性よりも海外に出稼ぎ労働をする人は多いです。
   
 最も重要な課題は、ポーランドの場合、まだ移住の政策が確たるものでないということです。したがって、ポーランド自身も移住労働者に対する政策はありませんし、海外に移住する労働者に対する確たる政策がないのが今後の課題だと思います。しかし将来的には、これも改善、好転が見られると思います。

(池上) 手塚先生、お願いします。

(手塚) 私はドイツの統合政策について、ドイツは移民法というのですか、外国人法を改正いたしました。そのときは与野党が逆転しておりましたから、大変な協議を重ねて新移民法ができました。とりわけ統合の問題に非常に大きな力点を置いております。

 ポーランドの方がドイツに働きに行って、そこにずっと住んでいる方はすぐに統合できてしまうのです。ところが宗教も違う、言葉も違う、トルコから来た人たちは今でも親子の断絶で、父親が決めた人と結婚しないといって親子の殺し合いが起きるくらいで、お母さんも家の中だけにいて、ドイツ語ができません。ドイツの小学校は、ご案内のとおり午前中だけです。午後のクラスは、母親と子供たちと一緒に教育する。数学と社会科、歴史などは別々のダブルコースで子供たちを勉強させています。それを2年後くらいに、一緒の基盤にしたいと。そのくらいの努力をして、そのお金を今までは州とコミュニティー(ゲマインデ)が全部負担したのですが、今度連邦が負担することになりました。以上です。

(池上) ありがとうございました。統合という中身をどう考えるのかという質問が最初にありましたけれども、結局そこの国で同じく生きていくための基盤をきっちりと身につけてもらうということが、今の手塚先生のお話の中でもあったのだろうと思います。

 それでは第2セッション「欧州の移民問題から導かれる教訓」を終了させていただきます。どうもありがとうございました。





 
  パネル討論−3
「持続可能な外国人受入れモデル」
  司会 藤川 久昭 (青山学院大学法学部助教授)
  パネラー 清成 忠男 (法政大学学事顧問/前法政大学総長)
    中山 泰則 (外務省領事局外国人課長)
    長谷川 洋 (群馬県邑楽郡大泉町長)
    ペーター・ハナウ (ケルン大学法学部教授/元ケルン大学学長)
   
 

(藤川) 第3セッションの前に、第2セッションに関するフロアの皆様からの質問に回答したいと思います。フラシンスカ先生には4点あります。今フラシンスカ先生にお伺いしましたので、私のほうから簡単に回答いたします。

 まず、ポーランドからの移住労働者のかたは、単身か家族帯同かという点です。大抵はシングルで、要するに季節労働者系が多いということです。

 ポーランドの政府として、出稼ぎ移民を政策として奨励しているかという点です。フラシンスカ先生のご見解では、政府が政策として積極的に奨励してはいないとのことでした。

 フラシンスカ先生は「not many」と言われましたけれども、今出稼ぎ労働に出られていることは、国の雇用政策の失敗ではないかという手厳しいご質問だったわけですが、これについては、必ずしもそうとは思わないと。ただ、非常に高い失業率であり、この点について新しい政府は今対処しているということでした。

 その他、ディスカッション・ポイントにつながるような質問につきましては、第3セッションのディスカッションのところで取り扱わせていただきたいと思います。

 まず、第3セッションの目的・意義の一つめは、これまでのセッションの総仕上げの意味です。日本として具体的にどうするのかという討論をしたいと存じます。

 二つめの目的ですが、持続可能を重視して他国の例を見たとき、ある時期単純労働者を積極的受け入れたと思うと、急に閉ざす、こういうことをやっている国もあるわけです。世界にて名誉ある地位を占めたいと思う日本は、こういうことをやるべきではないというのが、我々委員会の総意であると思います。日本の製品の特徴である長持ちを実現できる政策はどうあるべきか、ということです。この点を強調した議論になればと思います。

 まずドイツ政府の取り組みとしてハナウ教授、日本国政府の取り組みとして外務省の中山課長、地方自治体の取り組みとして大泉町の長谷川町長、そして中小企業の取り組み、さらに高等教育機関としての取り組みとして清成先生から問題提起をしていただくことにいたします。そのうえで、フロアの質問を交えながら、討論に時間を割きたいと思います。最初にハナウ先生よりコメントをよろしくお願いいたします。

(ハナウ) セッション3のトピックは「持続可能な外国人受入れモデル」ですが、本当にモデルがあるのかが非常に興味深い疑問だと思います。むしろ試行錯誤型のモデル作りしかないのではという意見もあります。

 これまでに、持続可能な受け入れのモデルは二つ浮上しました。一つは市場重視型のモデル。出国する労働者も、入ってくる労働者も、市場に任せる、という市場主導型のモデル、これはEUのモデルでもあります。

 もう一つの原則は無差別です。アメリカ移民のモデルが19世紀に確立されました。しかし、これはどこにでも使えるようなモデルではありません。北米の自由貿易圏は移民に対して適用されるわけではありません。その逆に、アメリカの南部では国境の警備もありますし、そういった意味では市場型のモデルに対して非常に警戒する向きがアメリカにはあります。日本では市場モデルが可能なのか。日本とドイツの間でそのモデルができるのであれば、どういった問題が起こりうるのか。どの国が市場モデルを導入できるのか。

 二つの条件が必要だと思います。経済的また文化的類似が前提条件です。でなければ、この市場モデルは機能しません。ポーランドの市場モデルはEU加盟によって、文化的な類似性がポーランドとEU諸外国の間に確立できたのです。ただ、まだ経済的な格差があります。そういった意味では、市場モデルの成功例がEUにあると思います。

 もう一つのモデルは、選択のモデルというべきでしょう。一国の政府が基準を決めて、入ってくる移民を選択するのです。アジアの国で市場モデルは、難しいのではと思います。恐らく国が選定する、選択のモデルになると思います。

 選択の基準は偶然に任せるわけにはいきません。この選択プロセスのポイント・システムが考えられます。教育、職業的な経験、言語の能力、そういった基準をポイント制にするものです。選択のモデルは、経済的に違う、文化的に大幅に違う外国人が国に入ってくると、統合の問題に発展する可能性があります。市場モデルは不差別のモデルですが、選択のモデルにおいては、差別を撤廃する動きが必要です。事例を掲げたいと思います。

 我々の政府は、業界、つまり雇用主に対して、外国人労働者、特に若い人たちに対する職業訓練の割り当てを決めました。ベルリンでは学校の生徒の9割が外国から来た人たちで、学校長は、校庭に入ったらドイツ語しかしゃべってはいけないというルールを決めて、非常にセンセーショナルな新しい統合へのステップを実現しました。統合の政策は、一時的なものではなく、ある程度プラスの差別が必要だと思います。特に待遇を厚くすることも必要だと思います。

(藤川) 長谷川町長、よろしくお願いいたします。

(長谷川)地方の現状について報告をすることで、持続可能な外国人労働者を受け入れる制度をいかに作っていくかに話を持っていければと思っております。外国人を受け入れた17年前、大泉の政策の基本は、文化的・人道的な面の重視で、その詳しいことは、大泉町の紹介の中にも記載してあります。

 17年がたち、外国人が6753人、内ブラジル人が4959人と、15.9%の人口比率になっている現状です。その中で行政区、32区の中で一番外国人居住率の高い地区は48.5%、2番めが41%とういう中で共生していくことが、如何に大きなハードルを幾つも持つことになるかをご理解いただきたいと思います。

 結論から先に申し上げますと、限界がもう近い、或いは限界に達しているといっても過言ではないと考えています。今後どういう展開をしていくか町の内部で大いに議論し、現状把握のもとに進めているところです。

 群馬県では平成17年12月までに22人の結核患者が発生いたしました。その内の7人が大泉町からで、全部外国人です。医療に対する不安も含め、どう対応したらいいか、町にはそうした権限も、人的、また財政的な措置も全くありません。県と、或いは国と協調してやらない限り、できないことです。平成2年の入管法改正以来、外国人と日本人の戸籍の扱いが全く別であることが、行政の事務を滞らせる事態を招いているわけです。人の動きがきちんと把握できる改正を要望していますが、平成2年の時点に戻って日系人が別枠であれば、日系人を別枠にできないかと主張しているわけです。今、法務省で法的な改正に向けて努力をされていると聞いており、ぜひ現実に合った内容にしていただければありがたいと強く申し上げます。

 持続可能にするためには、我々自治体の努力だけでは不可能です。先ごろ取った小中学生を対象にするアンケートでは5割が日本で暮らしたい、3割がブラジルに帰りたい。多分親の意向も反映されていると思いますが、やはり子供たちにしっかりと日本語を学ばせることが、日本で定住化していく最大の武器といいますか、必要になると考えております。二国間協定のようなものが、社会の全体的な分野にわたる内容について論議され、日本の実情に合った内容になることを希望します。

 最後に担当課としての悩みでもあり、役場としての悩みでもありますが、大泉が日本で一番高い居住率ということで、全国から、一市民、自治体、マスコミ、研究者といった方々の対応が、多い日に十何本も来ることがありまして、それだけで仕事が手につかない分野があります。これはやはり国がやるべきことだと、私はここで主張させていただきたい。国でそうした対応部局をぜひ作るような努力をお願いしたいと思います。

(藤川) どうもありがとうござました。引き続きまして、外務省の中山課長より、お願いいたします。

(中山) 今日、私に与えられたテーマは、持続可能な外国人の受け入れに、政府として果たすべき役割は何かということと思っています。今日申し上げる内容は個人的な意見であるということを最初にお断りさせていただきます。

 今後外国人の受け入れを拡大していくのか、しないのか、拡大していくとすれば、具体的にどうしていくべきかについては、国民的な議論が必要で、簡単に結論が出る問題ではないと思います。他方、現実の問題として、既に200万人の外国人が日本国内に在住しており、特に外国人が多く住む、いわゆる集住都市においては、雇用の問題や社会保険の問題、教育、それから青少年の非行といった問題まで、あらゆる面で問題が生じています。

 外国人の受け入れに伴う問題は、特に日系人の定住を認めた90年の入管法の改正後に顕在化してきた問題といわれており、お手元の配布資料に「外国人問題」と書いた紙があります。この資料の上の欄の左側に国籍別の外国人登録者数の推移があります。90年代以降、中国、ブラジル、フィリピン、ペルーといった、我々はニューカマーと呼んでいる方々が、急速に増え、日本国内での外国人の構成比が大きく変わっています。特に今、集住都市の問題の中心的なものが、日系ブラジル人の急増。93年に技能実習制度を導入して、技能実習生として国内に入ってきている圧倒的多数は中国の方です。その結果、地方自治体に大きな負担がかかっているわけです。

 私がここで強調したいのは、受け入れ拡大を議論する以前の問題として、まず日本国内における外国人受け入れの体制を整備する必要がある。これが非常に重要な課題であり、急務であるという点です。特に外国人受け入れに伴う色々な問題につき、政府として必ずしも十分な対策を執ってこなかったという厳しいご批判が、長谷川町長だけでなく、学識経験者、経済界などからも出ております。全ての責任が政府にあるという議論には、必ずしも賛成できないのですが、国の在り方にかかわる問題で、政府が主導的な役割を果たすのは当然と認識しております。また、この問題は縦割りの省庁では対応ができない、包括的な対応が必要な問題もあります。その面について謙虚に反省すべき点があろうかと思っております。

 日系人に定住権を与える90年の入管法の改正は、労働力移入という観点からではありません。むしろ日本人の子孫が日本国内に定住できないのはおかしいという、いわば人道的な観点による判断でした。ところが、定住者については、国内で就労制限を課すことができないので、人手不足の製造業などの担い手として、業者やブローカー等が目をつけ、広く日系人を斡旋して国内に入れる現象が起こったわけです。その結果、現在のような、例えば集住都市での問題が生じているという形です。ある意味、意図せざる労働力の移入をもたらした形になっているわけです。その結果、集住都市の自治体に過大な負担がかかっているのは事実で、国としても何ができるのか真剣に検討していくことは当然の責務と思います。その際には、政府横断的な総合的な取り組みが重要になろうと思っています。

 特に定住者については、中長期に日本国内に居住する可能性が高いわけで、他の外国人とは区別して有効な対策を考えるべしという町長のご指摘は、重く受け止めていく必要があると、思っています。定住者を日本の社会の構成員として位置づけていくためには、意識的な統合策が必要であると思います。個人的には、日本語能力の問題が最大のポイントになるのではと考えております。ドイツが先進的な取り組みをしていると理解しております。基本的に、1年以上の長期滞在者全て対して、630時間の統合コースの受講を義務づけていると。ドイツ語の講習が600時間、それ以外のオリエンテーションが30時間と伺っています。連邦政府において2億ユーロ程度の予算手当をして、実施は各州政府にゆだねるメカニズムになっていると承知しています。統合コースを受けるべき者が受けなかった場合には、在留許可の更新が行われないといった、統合と例えば在留管理、入管法の連携という包括的な取り組みが特徴的かと思います。こういったドイツの取り組みが、日本政府の今後の施策の参考になることは間違いないと思っております。現在、内閣官房が中心となり外国人の在留管理のための制度整備を念頭に、省庁横断的議論を開始したところです。ここ1〜2年の内に何らかの具体案を取りまとめることが期待されています。

 ここから先は個人的な意見ですが、その際には、入管法や外国人登録法の改正といった在留管理の技術的な面のみならず、日本に居住する外国人が十分な行政サービスを受けられるようにすることが大事ではないかと思っております。このような外国人を受け入れる体制の整備議論を受け、今後どのような形でどのような外国人を受け入れていくかについても、省庁横断的な議論を行っていく必要があります。形でいうと、マーケット・モデルとセレクション・モデルがありますが、マーケット・モデルは日本では取りえないのだと。政策として、一定の基準を設けてセレクションするという形での話し方をしております。

 最後にごく短時間、今後の受け入れの方針について、今どういう状況にあるのかということを紹介したいと思います。配布資料の4枚め、2.(3)をご覧いただきたいと思います。今、日本政府としてどういう外国人労働者を受け入れるのかについては、平成11年に出された閣議決定、第9次雇用対策基本計画が基本方針になっています。一言で申し上げれば、専門的・技術的分野の外国人労働者の受け入れは、より積極的に推進する。他方、単純労働者は、基本的には入れないということです。それでは、実際にどうなっているかと申し上げます。専門的・技術的分野、日本政府として積極的に受け入れるべき人は、全体の中であまり大きな比重を占めておりません。圧倒的多数はいわゆる単純労働分野で働いているのが実情です。

 資料の「経済財政運営と構造改革に関する基本計画(方針)2005」、平成17年閣議決定、いわゆる「骨太の方針」といわれるものですが、その中に、「海外人材を活用するため、高度人材の受入れを促進するとともに、現在は専門的・技術的分野とは評価されていない分野における外国人労働者の受入れについて、国民生活に与える影響を勘案し総合的な観点から検討する。また、日本で就労する外国人が国内で十分その能力を発揮できるよう、日本語教育や現地の人材の育成、生活・就労環境の整備を推進する」ということです。

 具体的肉付けについては、まだ議論が収れんしていない現状ですが、今日頂いたお知恵も借りながら、政府が一体となって、一定のコンセンサスを達成していくことが必要な分野だと思っております。

(藤川) ありがとうございました。それでは清成先生、よろしくお願いいたします。

(清成) 最初に中小企業についてですが、第1は基盤技術の中小企業です。基礎を成す不可欠な技術、資料に、「3.先端新産業分野等を支える中小企業群」というのがあります。半導体等、あるいは部品等のデバイス・コンポーネントのいちばん下のところがそれを支える基盤技術ということになるわけです。問題は、こうした基盤技術を有する中小企業が、今、日本の製造業復活という中で極めて重要な位置にあるわけです。これを健全な形で維持できるかどうか、基盤技術の中小企業の中で、いちばん重要な労働力は、技術と技能を理解し、両方を媒介する労働力になるわけです。

 我々がいちばん重要だと考えたのは、問題把握力、解決力です。これは設計や段取り、評価、そのほかに、機械操作力、手作業力、いわゆる器用さ、あるいは手さばきといったもの。それから、感知力、この4要素の中に、それぞれ技術があり、技能がある。少なくとも現代の基盤技術というのは非常に高度なものです。問題は、こうした技術者、あるいは技能工を、日本の中で確保することが今極めて困難になっています。例えばシリコンバレーで使われている工作機械は日本製とドイツ製が多いわけですが、そういうものが消えてしまうという可能性すらないわけではないということになるわけです。そうしますと、当然こうした技能工というのは、発展途上国から若い人たちを受け入れて訓練するということになるのだろうと思うのです。

 こうしたところに日本人の若い人たちが入ってこないというのは、これが3K職種だからではなくて、こういう技能習得には非常に忍耐力が要るということと、所得が伴わないという問題があるためです。それを今、協同組合とか、あるいは一部の財団に依存しています。財団のアイム・ジャパンの場合ですと、大体年間2000人から、多いときで3000人ぐらい受け入れて、3年間訓練します。3年たったら帰すということですが、もう少し持続的にシステム化するということは、やはり国が何らかの制度設計をして教え込むということと、それから、個別の企業に送ることの限界があります。これはドイツで職業訓練の場合にデュアルシステムをやっていたわけですが、最近のように技術が非常に高度化して、高度な専門知識が必要になってきますと、現場だけではなくて、つまりOJTというだけではなくて、ドイツのようなデュアルシステムが当然必要になるだろうということで、こういう制度設計が今、必要ではないかということです。

 2番めに、専門職、特に研究開発要員をどう受け入れるかということになってきます。 今日の先端技術、を考えてみますと、ヘテロジニアス(heterogeneous)な人材を集めて議論するということでない限り、なかなか開発は難しいということです。シリコンバレーを見ますと、2割が外国人です。こうした外国人をどのように活用するかということは、極めて重要です。日本でもこうした研究開発拠点、文部科学省のプロジェクトでは知的クラスターというのが18か所あります。これを起業化する場合に、経済産業省の産業クラスターというのがあるのですが、こうしたことも日本の国内で閉鎖的に展開していることの限界がすでに起こってきています。

 中小企業に属する三つめは、創業よりも廃業のほうが多くなって、中小企業の数そのものが減ってしまっているということがあります。創業を増加させるということ、そこに外国人を、起業家(アントレプレナー)に限定して誘致をするということがあります。これは特に中国からの留学生、それから留学が終わって日本の企業に勤めた人たち、自分で会社を起こした人たちという3種類の人たちについて、川崎市でアンケートをやりましたら、もう日本に来る前から90%以上が将来日本で会社をスタートさせたいという希望を持っていたということが分かったわけです。こうした起業家を育成する、選択的に起業家を誘致するというのは、シンガポールやニュージーランド、それから中国では広州等がすでにやっていることです。そういうことを日本でももう少し制度的にきちんとやったらどうかということです。

 次に高等教育とのかかわりですが、これについては二つばかり申し上げておきたいと思います。18歳人口が急減期に入って、人口減少地域の大学で、すでに入学定員割れが生じています。昨年の日本の大学・短大への進学率は51.5%で、こういう段階には、学力が低くても、学習意欲がなくても、大学に入ってくる階層が非常に増えてきている。こうした人たちをどう動機づけするかということも重要ですが、問題は、特に私立大学の場合に、こういう大学ほど留学生を安易に引き受けるということがあるわけです。

 それから、もう一つ、私どもの大学でドイツのある大学と提携しておりまして、年間20名の学生をワン・セメスター送っています。数年前に提携校の学長を集めて会議をやったわけです。トルコ、ギリシャ、ポーランド、ロシア、イスラエルの大学です。特にトルコ等に関しては、もうドイツ語しかしゃべれないトルコ人の子供が非常に多いわけです。こういう子供たちがドイツの大学に入ってきた場合に、トルコの大学と提携をしていて、ドイツから留学させる。それから、二つの大学で共同研究をやる。カルチャー、あるいは、移民に伴う社会的な問題の社会学的研究などが研究対象になるということです。

 日本ではそこまで行っていないわけですが、特に中国等に関しては、もうそういうことに踏み切ってもいい段階ではないかと思うわけです。




(藤川) 清成先生、どうもありがとうございました。第3セッションのディスカッションに入りたいと存じます。

 ハナウ先生、ヨーロッパ諸国では違法移民、違法労働者の合法化、アムネスティーも含めた合法化が行われております。これについて、なぜそのような合法化がなされるのか、根拠、背景、考え方についてお聞かせいただきたいというご質問です。よろしくお願いいたします。

(ハナウ) これはヨーロッパ全体の動きではありませんが、特にスペインを中心に行われている動きです。メキシコ人不法移民に対して法的な身分を与えようという、議論が展開されてきました。多くの不法労働者が存在する中で、対応しなければという必要性があった。つまり、雇用しなければならないという状況があったわけです。スペインは、ストロベリーだけではなくて、オリーブの収穫時期にもたくさんの労働者がいます。なぜこの不法労働者が発生するか研究した結果、低賃金の労働力が必要であり、その雇用状況が法的に認められれば、よりよい状況に進むのではないかということです。EU全体としてそういう動きがあるわけではありません。

(藤川) 長谷川町長に対するご質問ですが、大泉町として企業との連携事例があれば、具体的に、簡潔に教えてくださいということです。よろしくお願いいたします。

(長谷川) 町がいろいろな施策を展開し、その内容を「ガラッパ」というものに集約して知らせているのですが、その配布という段階で協力をしていただいています。あとはいろいろな周知の、情報の提供という中で、企業と連携を取っているということが主な内容です。派遣業者との連携はなかなか難しいのが実態です。大泉では国民健康保険に加入が認められているのですが、派遣会社からの該当者への情報提供がなく、苦労しているのが実態です。派遣会社とのかかわり方を見直していかなければならない、ぜひ、そういう意味で実情に合った内容、そして外国人自身がそれを通じてよくなるように、状況がよくなるような方策で徹底していただくのがよろしいのではないかと思っております。

(藤川) ありがとうございました。二つめです。大泉町に外国人の政策提言の場があれば、どのような場があるかご教示いただきたいというご質問です。

(長谷川) 現状では第三者懇談会というのをやっておりまして、地域にいる外国人の皆さんと、地域の区長をはじめとする役員と、あとは役場の担当職員を含めた三者が、情報提供を含めて、ルールの説明などを行っているのが最大の内容です。

 日系ブラジルのかたは、組織というものがほとんどなくて、個の単位で友人関係のグループでいろいろな情報提供をしているという隣組等の組織になじみにくい体質を持っているところが、連携を取りにくいものとして存在しています。

(藤川) どうもありがとうございます。外務省の中山課長に横断的な取り組みということをもう少し教えていただきたいということです。よろしくお願いいたします。

(中山) 外国人の在留管理の体制の在り方を考えているわけですが、どういうかたが、どこに住んで、どういう仕事をして、どういう家族構成でおられるのかということについて、包括的なデータがないと、横断的な取り組みができない。こういった面をとらえて、横断的な対応が必要だと申し上げているところです。

(藤川) どうもありがとうございます。最後ですが、清成先生にご質問です。日本の外国人研修・技能実習制度を日本で働くシステムに連結させるという仕組みは、海外の人材の収奪になるのでないかというご懸念です。お願いいたします。

(清成) インドネシアの人たちを訓練している企業の話ですが、3年間できちんと教えるというのは難しいのですが、一応のことは教えられる。一応マスターしてくれたら、自分のところの古い機械をつけてインドネシアに帰し、向こうで会社をスタートしてもらう。低コストが要求される部分は、向こうでも生産できるといったような一種の分業関係からスタートして、インドネシアの工業化にプラスになるということになるわけです。

 先ほど時間の関係で十分に説明しなかったのですが、こういう基盤技術という場合に二とおりあるのです。比較的に簡単に習得できるようなものと、それをベースにしながら高度化していく。例えば新車の開発のときから共同でやって、部品開発をやる。その場合に、加工技術も工夫していくといったようなことになってくるわけです。こうしたものは日本に残ります。日本で訓練をして、帰ってもらって、そこからスタートしてもらっても十分、それからまた、何年かに1度は日本に呼ぶといったような形で、結局向こうの技術水準の向上にも寄与できるという問題があります。

 それから、日本語という言語の問題があります。私が行った日本の中小企業の経営者に聞きましたら、教える熱意と学ぶ熱意があったら、言葉の問題はどうってことないと言うのです。どうも技能や技術の世界というのはそういう面があります。したがって、人をセレクトするというのも、そういう視点が極めて重要になってくるわけです。一人前になれば向こうに帰して、向こうで会社を起こしてもらうということなのです。それが長期的に見れば、質のいい企業に発展していくと。

(藤川) どうもありがとうございました。今度はディスカッション・ポイントに関する議論に移りたいと思います。

 第3セッションで持続可能な政策を、受け入れ体制を考えるときの非常に重要な点である役割分担論について、ご質問も踏まえながら、長谷川町長と中山課長にぜひとも5分ぐらいで議論していただきたい点があります。どういう役割分担を国と地方自治体ですればいいのか。すみ分けもあるかもしれません。よろしくお願いいたします。

(長谷川)外国人の方々は非常に移動が激しい。その実態がなかなかつかめない中で、対応をしているけれども、町も財政的に非常に厳しい状況がありますし、人的にも300人の職員で、担当課は3人です。先ほど多くの部分は国や県がやるべきという話をしたのですが、国の人的、或いは経済的な支援をぜひお願いしたいというのが1点です。それと、教育の問題で、ぜひ入国してくる段階で、日本語を研修したり、あるいは日本で暮らすためのルールを基本的に習得させたりということを、国がやったり、あるいは送り込む国との連携でやっていただければ、非常に効果があるし、その意識を持って暮らすようになれば、大泉だけに限らず、日本のどこへ行っても同じように住めるのではないかと思っています。

 それと、ぜひ現状存在している各省庁間の温度差をなくしてもらうことが、その横断的な対応をする中で薄まっていくのではないかと思っています。

 また、治安についてです。外国人の少年犯罪でいちばん多いのはブラジル人です。体感的な面も含めて、治安の悪化というのが現状として出ております。そういう観点から、警察官の増員を国としても図っていただければ、本当にありがたいと思っています。

(藤川) それでは中山課長、よろしくお願いいたします。

(中山) 今、長谷川町長から具体的なご指摘を頂きました。不十分ではございますが、私なりの考えを申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、外国人の居住地の把握が困難なために、各自治体が行政サービスを届ける際に困難を来しているという問題ですが、この点は深刻な問題であると思っております。現在でも外国人登録法上、転入届けは義務が課せられておりますが、毎週のように居住地が替わる場合に、なかなか期待ができないという問題があります。どうしたらもう少しきちんと捕捉できるのか、国のレベルでも今鋭意検討しているところです。

 日本語なり文化的なオリエンテーションを国の責任でやってほしいというお話です。ドイツの例で統合教育コースを国の責任において実施していると。実施自体は州政府がやっているようですが、そういったモデルがあることは私どもも認識いたしております。ただ現行の入管法の整理では、日本語まで教育することが国の責務であるのかというのは、難しい法的な論点です。ただ、ありうべき姿として、だれかがやらなければならないのであれば、やはり政策を執っている国が考えるべきであろうというのはごもっともな指摘だと思います。今回このような席でそういうご指摘があったことは、持ち帰りまして、関係省庁にもお伝えすることにしたいと思います。

 確かに省庁によって温度差があるというのは事実かと思います。ある意味、大きな戦略のもとに関係省庁が一致して取り組んでいくという政治的なリーダーシップが必要かと思っております。

 最後の治安の問題です。政府におきましても、外国人問題といった場合に、最初に念頭に来るのは実はこの治安の問題です。厳しい環境に置かれ、その結果、不就学、それから非行に走って、極端な場合には犯罪を犯すという構図になっているわけです。犯罪対策という面で警察官を増やすというのは当然のことですが、一方で、問題の根源について行政として考えなければいけないと思っております。

(藤川) どうもありがとうございます。続きまして、責任分担論に関しまして、年金とか、教育とか、人材育成という広い意味での社会コスト負担論、これについてハナウ先生にお伺いしたいと思います。もう1度質問を申し上げますと、いわゆる移民のかたがたを受け入れる場合の社会的コストの負担の在り方、だれがどのように負担するのか、これについて、ドイツの議論やご経験を簡単にお示し願います。

(ハナウ) 外国人労働者を雇い入れたい企業があれば、ある程度の負担は社会に対して企業がすべきだという考え方もあるのです。理由は二つあります。

 一つは、コスト・シェアという原則、もう一つ、労働市場などにおいても、例えば女性をもっと社会の中に統合しなければいけないという考え方もありますし、また高齢者の雇用をどうするのか、そのようなところでの社会問題もあるのです。女性や高齢者に関しては、国の責任という部分が高い。だから、外国人の雇用に関しては、合法的に企業が雇うという許可を得たうえで、ある程度のコストを負担するのがしかるべきだという考え方もあるのです。

(藤川) 最後は、サステイナブルな受け入れに当たって、日本人として外国人を受け入れるときの態度という話です。要するに、よく日本では外国人のほうが犯罪率が高いということがいわれているが、本当にそうなのかということも含めて、こういった日本人の態度についての質問です。

 中山課長、よろしくお願いいたします。

(中山) まず外国人犯罪ですが、日本人が国内で犯罪を犯す率に比べて、入国する外国人の犯罪率が高いかといえば、決してそういうことはありません。ただ、犯罪の手口ややり方が、日本の通常の犯罪と随分違うと、日本人の中では非常に強い受け止め方をする傾向があるせいだと思いますけれども、まず犯罪率が高いということはないと思います。

 それから、日本人としてどう受け入れるべきなのか、これは役所の人間が言うべき問題ではありませんが、今後、日本の社会が経済的にも社会的にも繁栄していくために、外国人を入れていくという決断をするのであれば、実際今でも200万人すでに入ってしまっているわけですけれども、マーケット・メカニズムに任せるという形で運営していくというのは、恐らく困難だろうと思います。セレクション・モデルで行かざるをえないであろうと。その際に、やはり重要なのは、客観的な基準をきっちり設けて、どういう人であれば日本はウエルカムなのかを、対外的に明示したうえで、入ってきたかたには日本の社会の構成員として日本人と同じ扱いをする。そのうえで、日本社会の繁栄に寄与する形で活動を十分していただくということが、重要だろうと思います。そういう意味では、日本の社会の中に統合して、日本の社会の構成員になっていただくことが、心構えとして大事と個人的には思っております。

(藤川) どうもありがとうございます。比較的多くのかたがご指摘くださっているのですが、外国人の受け入れに当たっては、我々の懐が問題であるということだと思います。しっかりした日本の在り方、日本の考え方、日本語についての取り組みです。この「日本とは」という非常に抽象的な点ですが、サステイナブルな、つまり腰が据わった対応をするには、この点については看過できない、そしてご指摘も多うございました。

 高梨先生、この問題を考えるときの日本の在り方について、指摘を頂ければと思います。

(高梨) 自分たちの犠牲をもって他民族、他人種が、共に生活するというのは、なかなか建設しにくいなと。とりわけ日本人は、その点今まで島国でありましたから、そういう問題を絶えず抱えているのではないかと私は思っています。

 ワーク・パーミット(労働者許可制度)を入れようといったときに、法務省がいちばんこだわったのは在日朝鮮人との関係でした。日本に永住しながら、日本国籍を取る人がほとんどいないのが現状です。こういう点についても考えるべき課題がたくさんあります。

 要するに、このような仮定の中で人口が減少していったときに、労働力不足になるとはいえないと。むしろ雇用・失業情勢が深刻化していくに違いないと。そのとき、やはり日本人のことを、日本の国益からいっても優先せざるをえないだろうと思うのです。

 ただ、日本の技術開発のために海外からさまざまな高度な技術を持った人を入れるということは、大いに日本の経済の発展のために役立つわけですから、それは今までどおりに門戸を開放しているわけですから、これを有効に活用することを考える、こういうことが必要かと思うわけです。

 それからもう一つ、先ほどからいろいろ議論を聞いていて、私どもが提案した外国人登録をするための外国人パスポート制度の支持がだいぶ強いような印象を今のセッションで受けました。私どもの研究会でまとめたことは、かなり多くの人に支持を得られるのではないかと、大いに意を強くした次第です。どうもありがとうございました。

(藤川) どうもありがとうございました。最後に司会として簡単に総括させていただきますが、そのあとで手塚先生より総括をお願いしたいと思います。

 要するに、外国人のかたがたを継続的に、かつ、しっかりと受け入れるということは、どんな人を採りたいのか、来てほしいのかという、我々の外国人像をクリアにしなければいけないと思います。そして、その裏側としての日本人像というのもあると思います。

 詰まるところこの問題は、先ほど高梨先生もおっしゃられたように、日本国自体のサステイナビリティーということだと思います。この点を忘れずに継続的に議論するとともに、今日、私は特に印象深かったのが、外国人労働者問題は副次的な効果でもたらされたものもあると。思わぬところで必ず出てくる外国人労働者問題、もちろんそれは日本人の問題である。つまり、ジェンダー・メインストリーミングなどという言い方がありますが、まさにこの外国人労働者イシュー、移民イシューでもいいのですが、これをメインストリーミングにして、常にバランスの取れた議論を進めなければいけない。どこかに負担のかかる議論は必ず破綻すると私は確信します。

 最後に手塚教授より今日の議論の総括をしていただければと存じます。よろしくお願いします。

(手塚) 日本は今、いわゆるグローバリゼーションの中で、世界の中でいちばん当たり前のことができない国であります。つまり外国人の問題についても、使用者、労働組合、行政、研究者、市民一人一人が当たり前のことができていないということです。

 日本はあまりにもドメスティックですが、日本の労働市場の中にたくさんいろいろな問題を抱えています。同じ仕事をしていながら、男性の場合に正社員とパートタイマーの間は10倍の開きがある。これはおかしなことではないか。私は労働法の専門家ですが、そういう状況です。パートタイマーの世界、それから派遣も正式な労働者派遣法に基づいて、きちんと税金を納め、社会保険を納めている派遣と、偽装業務下請けと両方含めた中に外国人のかた、とりわけ日系人のかたが押し込められているという状況で、日本企業は工場を海外にたくさん造ればいいのか、拡大だけすればいいのか、私たちは強く反省しなければいけないことではないかと思います。

 先ほどフィリピンや何かの問題を指摘しましたけれども、これは個別的経験ではないかと意見を下さったかたがおられます。おっしゃるとおりです。今般、EPA、FTAの結果、看護師さん、介護士さんを受け入れることになりました。これにしても、きちんと受け入れなくてはいけないということを、私どもは再三申し上げていますし、そういう形で受け入れないと、日本は外国人労働者を受け入れるどころではないということです。

 ハナウ教授とは長年一緒に研究してまいりましたけれども、ドイツの場合に、別にそういうことはいろいろあります。問題がありました。確かに問題がありました。「ヨーロッパは一つ」という標語がEUの標語です。日本の場合に、私たち日本人は「アジアは一つ」という言葉を、掲げることができないのか。私たちは、額に汗して働いて、何のために働いているのかを考えたときに、日本はやはりアジアの中で尊敬される国になりたい。日本人は尊敬される国民になりたいというのが、私どものこの研究委員会を立ち上げ、かつ、今日の提言をさせていただいた理由です。

 研究委員会の提言をした世代は3世代にわたっております。私は中間の世代でありますが、私よりも上の世代の先生、これは長年、社会科学的な中小企業問題を研究されてきた清成先生、そして労働問題を研究されてきた高梨先生、それから私たちの世代、そして藤川先生や池上先生のような若い世代で、徹底的に議論をして提言を出しました。これについてご批判なり、ご意見がありましたら、どうぞお寄せいただきたいと思います。

 本当に今日は長い一日を、私どものために時間を割いて出席してくださった皆様のご意見やご質問を全部受けられないのは非常に残念ですけれども、どうぞ今後の展開のために一緒に考えて、アドバイスし、あるいは注文をつけていただきたいと思います。どうも長い時間ありがとうございました。