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ニュースレター
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2007年 3号
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Report | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成18年度
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目的 貿易の東アジア域内相互依存が深化するなか、東アジア諸国間の貿易関係は、従来型の垂直的分業関係から水平的分業関係に移行するだけでなく、同一産業内の付加価値や技術集約度の差に基づく「垂直的産業内分業」が進展しつつある。しかし従来の議論は日本、中国、ASEANの経済的相互依存関係の深化を認めつつも、三者間の協力関係については必ずしも十分に議論されていない。 本研究委員会では平成17年度と18年度の2年にわたり、日本とASEAN、日本と中国でなく、経済的躍進が著しいインドも射程におさめたアジア域内での産業毎の相互関係とダイナミズムの解明に焦点をあて、今後の望ましい事業のアジア展開とアジア域内協力の可能性を検討した。平成17年度は行政の東アジア域内における経済・産業協力の取組み、金型、IT、電子、石油化学、繊維、自動車の各産業の現状と問題点につき研究を実施し、本年度は政府間レベルに加え、政府と民間の協力関係、更には民間、業界団体による協力のありかたにつき研究を実施したのでその成果を報告する。 本年度の成果概要 東アジアの域内貿易を支えているのは、国間の取引ではなく企業内貿易や企業間取引であり、政府と民間の間の協調行動、産業別の業界団体レベルでの調整、そして企業間同士の調整が、政府間交渉と並んでいっそう重要というのが、本研究会の共通認識であり、この点を念頭に、産業協力の可能性をその主題別に整理した。 第一は、個別産業の特性や企業の得失利害を超え、地域が直面している共通の問題への積極的な取り組みである。制度の設計や機構の整備への協力が重要となり、推進主体は当然ながら政府となる。 第二は、地域レベルでの人材育成で、第12章の三上論文は、日本がいかに、アジアからの留学生の受入れとその教育・訓練で遅れているかを衝撃的な形で紹介している。 留学生の受け入れ体制の整備では政府が主導的な役割を果たすが、産業人材育成という面では、民間や個別企業の役割も大切であるし、何より政府と民間の間の協調行動が重要となる。第3章の小島論文は、インドのITソフトウェア産業を例に、政府と民間がアメリカの仕組みとニーズをいかに積極的に取り込んできたかを明らかにしている。 第三は、個別産業の域内レベルでの相互補完的な分業を支える枠組み、もしくは競合的利害の調整を図る仕組みへの協力で、政府主体の協力では、第10章篠田論文の日ASEAN産業協力(AMEICC)や、第13章山近論文のテーマ別経済産業技術協力が参考になる。 政府と民間レベルでの産業協力の棲み分けに関して示唆的な論点を提示しているのが、第9章の峰論文で、化学産業が直面する問題は、もはや通商問題やダンピング訴訟への対応ではなく、消費者団体などが要求する環境問題にどう対応するのか、国連が提唱するGHS(Globally Harmonized System)などに対して、東アジア諸国の化学業界と各国政府がどのように協力していくかが問われているという指摘であり、主導権が政府から業界団体に移っている。同じことは、第8章の繊維産業についてもいえ、日本の民間企業が主導して1996年に創設した「アジア化繊産業連盟」が、初期の国別の設備調査や意見交換の段階を終えて、地域が抱える共通の深刻な問題、つまり、過剰設備問題、製品の模倣問題(知財権の保護問題)、密輸問題についての取り組みを開始したことを伝えている。
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