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2003年 4号

Meeting
IPCC第4次評価報告書(AR4)に向けての
国内連絡会準備会開催報告



 平成15年5月16日(金)午後、経済産業省の別館会議室において、標記準備会が開催された。参加者は、第3次評価報告書国内委員会メンバー16名(全24名は下記「委員一覧」参照。)、関係省庁からは、経済産業省・市川審議官、環境省・山田審議官、外務省・岡庭室長はじめ20名、研究機関・産業界からのオブザーバー54名の合計90名であった。事務局は、地球産業文化研究所(GISPRI)と地球・人間環境フォーラム(GEF)が共同で実施した。

<目 的>
 IPCCの活動は、気候変動枠組条約/京都議定書を中心とした国際的な対応策検討体制と呼応して、科学的知見の集積という観点で、今後ますます重要性を増してくる。我が国は、これまで積極的にこの分野における貢献をしてきており、スコーピング会合が開始されたことを踏まえ、AR4へ効果的に貢献するための体制整備を進めるため、第3次評価報告書(TAR)作成作業関係者にIPCCでの検討状況について情報提供を行うとともに、体制整備に向けた助言を得ることを目的として、標記準備会を開催する。

(なお、AR4に対する政府の方針は、「IPCC第4次評価報告書作成に向けて」及び「IPCCとは」を参照願います。)

 AR4の国内連絡会は、本年11月、ウィーンで開催される第21回IPCC総会でAR4の骨子及び作成計画が承認された後、2004年度に設置される予定。

<実施概要>
 座長、市川審議官、山田審議官のご挨拶に続き、4月14〜16日、モロッコ・マラケシュにて開催された第1回スコーピング会合に出席された関参事官、平石氏、鬼頭氏、三村氏、山地氏から、それぞれ報告があった。
 
(全体)
  AR4は2007年完成予定であるが、本格的な執筆は2004年4月から始まるため、それまでに執筆候補者をリストアップする必要がある。特に若手の人材発掘を期待する。
  AR4はポスト京都の議論の時期に完成されるため、UNFCCCの議論へのインプットという意味で非常に重要である。
  各作業部会(WG1〜3)毎の議論の他に、今回は7つの横断的テーマ(不確実性とリスク、緩和と適応の統合、主要脆弱性、持続可能な開発、地域毎の評価、水、技術)に関する議論も行われた。次回スコーピング会合(9月、ベルリン)の主要議題となる予定。
 
(WG1:科学的根拠)
  報告書の骨格はほぼ出来上がっている。
  AR4は、報告書をシンプルなものとするため、TAR以降の科学的研究の進展を中心とし て記述する。
 
(WG2:影響、適応、脆弱性)
  主要な論点が整理され、報告書の骨格も固まりつつある。
  「温暖化の影響の検出」について、大きく取扱う予定。
  「分野影響」については、WEHAB(水、エネルギー、健康、農業、生物多様性)に焦点を絞 り、検討を進めていく予定。
 
(WG3:緩和対策)
  自由討論が主体。報告書の骨格も議長案が提出されたが、流動的。
  科学的検討の場ではあるが、途上国の参加者が、先進国が十分な緩和策を取っていない と非難したり、逆に、先進国の緩和策がエネルギー輸出を制約する可能性を強調するなど 政治的な議論が行われる一幕もあった。
  長期技術、適応技術を含めて、対象技術がより広範囲になる可能性あり。
 
(主要質疑・意見)
  IPCCは、スタートから15年が経過しマンネリ化の傾向があるため、AR4は目玉が必要。 例えば「不確実性」について、判っている部分とそうでない部分の提示が必要。
  短期の気候変化に対する適応コストに関する分析・評価も必要だが、長期的変化に対する適応コストの分析・評価も大切。ただし、非常に困難である。
  若手研究者の積極的な参加は賛成。

<委員一覧>
  茅 陽一   慶應義塾大学 教授 (座長)
  平石 尹彦   IPCCインベントリータスクフォース共同議長
(WGT)    
  鬼頭 昭雄   気象庁気象研究所
  中島 映至   東京大学 教授
  野田 彰   気象庁気象研究所
  松野 太郎   地球変動研究所 地球フロンティア研究システム長
(WGU)    
  安藤 満    富山国際大学 教授
  佐々木昭彦   福島県立医科大学 助教授
  西岡 秀三   国立環境研究所 理事 (座長代理)
  花木 啓祐    東京大学 教授
  原沢 英夫   国立環境研究所 環境計画研究室長
  三村 信男   茨城大学 教授
  吉野 正敏   筑波大学 名誉教授
(WGV)    
  石谷 久   慶應義塾大学 教授 (座長代理)
  井村 秀文   名古屋大学 教授
  柏木 孝夫   東京農工大学 教授
  藤森 隆郎   社団法人 日本林業技術協会 技術指導役
  松岡 譲   京都大学 教授
  陽 捷行   農業環境技術研究所 理事長
  森 俊介   東京理科大学 教授
  森田 恒幸   国立環境研究所 社会環境システム研究領域長
  山口 光恒   慶應義塾大学 教授
  山地 憲治   東京大学 教授
  和気 洋子   慶應義塾大学 教授
以 上

(文責:阿知波 雅宏)