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ニュースレター
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2006年
5号
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Research Project | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成18年度
「インドとの新たなパートナーシップ」研究委員会
1.本研究実施の背景と狙い
インドは過去4半世紀にわたって年平均5−6%の経済成長を持続させるとともに、最近3年間の成長率は8%近い水準に及んでいる。貧困問題、インフラ未整備という問題を抱えつつも、人材の宝庫、さらには潜在的な巨大国内市場という優位性を生かして、同国は今後とも長期にわたって高レベルの成長が期待される。90年代以降、インドの成長を大きくリードしてきたのはITサービス産業であったが、近年、成長拠点はバイオ・医薬、製造業、建設業の分野にも広がりつつある。 インド経済の台頭は、グローバリゼーションの進展という文脈と密接に係わっている。インドのITサービス輸出先の7割近くを占めている米国である。コスト削減や生産性向上という観点から、さらにはR&D拠点として、米国では多くの有力企業がインドに大々的にITアウトソーシングを展開している。従来、インドの対外経済関係は米国やEUに傾斜し勝ちであり、東アジアとの関係は比較的疎遠であったが、1991年以降、「ルック・イースト政策」を展開する中で、インドとASEAN、中国、韓国など東アジアとの経済関係は着実に拡大する傾向を示している。インドはタイとの間でFTA枠組み協定、シンガポールとの間で包括的経済協力協定を締結し、貿易、投資面での両国との関係拡大に拍車が掛かっている。印中貿易は2002年度には日印貿易を凌駕するとともに、米印貿易に肉薄するレベルにまで急速に拡大しつつある。また韓国企業は対印直接投資で顕著な実績を示しており、目下、印韓両国の間でEPA締結に向けての交渉が進行中である。東アジアとの連携強化が進展する中で、もはやインドの存在を抜きに東アジアの繁栄と安定を考えることは不可能な状況になっている。 今後とも長期的な高レベル成長が展望される中、人口11億強のインド経済の動向に対して世界的に熱い眼差しが向けられている。2003年度以降、インドは中国を抜いて我が国の円借款最大の供与先になっており、経済協力面においてインドの重要性は我が国にとっての極めて大きいものがある。ただし経済関係全体として見る限り、両国関係は本来あるべきレベルに遠く及んでいないとともに、他の東アジア諸国に比べても、我が国の対印経済関係は出遅れ気味の状況にあったといえる。1990年以降、日印貿易は停滞し、両国の貿易全体に占める日印貿易のシェアはいずれも低下を余儀なくされてきた。我が国の対印投資では、昨年度、ポートフォリオ投資は顕著な拡大を示したものの、直接投資についていえば、依然として2.1億ドルのレベルであり、インド全体のシェアでも4.6%にとどまっていた。 これまで停滞気味であった日印経済関係であるが、最近ようやく、その強化・拡大に向けた新たな動きが本格化しつつある。今年7月には日印合同研究会の報告書が両国首相に提出されたが、それを受けて、近々、両国間でEPA成立に向けての交渉が開始される見込みである。同報告書で指摘されているように、両国間での貿易、投資の拡大を図る上で、人的交流、科学技術交流、投資環境整備に向けたODAの活用、環境・エネルギー分野の協力など幅広い分野での取り組みが不可欠である。両国に横たわる相互補完性を活用しつつ、いかに両国関係の拡大につなげていくのか、大きな可能性と課題が残されている。我が国はIT技術者の不足や少子化問題に直面しているのに対して、インドは人材の宝庫であり、また潜在的な巨大市場を有する国であり、日印両国はまさにグローバル・パートナーシップを形成すべき間柄にある。 本研究会では、両国に係わる政治、経済、文化、社会的諸条件を踏まえつつ、今後、日印パートナーシップの強化を図る上で、産学官のレベルでいかなる取り組みが必要とされるのか、その課題と方策について検討することを課題とする。 2.研究の進め方 インド経済、政治の専門家、日印関係に精通している行政、研究機関、民間企業の識者、インド人企業家を加えた研究委員会を構成し、日印合同研究会報告での議論を踏まえて、今後、日印パートナーシップの強化という観点から、日印貿易、対印直接投資の拡大、さらには人材交流、科学技術交流の活発化を図る上で何が求められるのか、また日印パートナーシップの強化は日本に何をもたらすのかを研究する。 3.本研究の狙い インド国内政治の現状と外交上の課題、インド経済の長期展望を視野に収めつつ、今後、日印パートナーシップを図る上で何が求められるのか、IT、バイオ、自動車など産業別事例研究に基づいて、直接投資支援型の対印経済協力の方向性、さらには対印直接投資・アウトソーシングの拡大に向けての方策について具体的な提言を目指す。 研究委員会名簿
(敬称略、五十音順)
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