3.第三次評価報告書(1996〜2001)
IPCCでは、第二次評価報告書以降の気候変動に関する最新の科学的、技術的及び社会経済学的評価を行い、2001年に行われる気候変動枠組条約締約国会議に提出するため、1995年12月11日〜15日に開催された第11回全体会合(ローマ)において第三次評価報告書の作成が決定された。
第三次評価報告書は、地域別の評価を重視し、途上国や産業界、NGOからの参加者を積極的に取り込む等の方向で検討を進めた。特に地域別評価では、気候変動による影響・適応策について社会経済的な観点も含め総合的に地域分析を行い、技術や部門横断的手段などの緩和策についても地域の市場ベースでの費用対効果を評価した。
第三次評価報告書作成にあたり1996年9月の第12回全体会合において、第II作業部会の共同議長であったワトソン博士(米)が議長に選任された。同博士は所信表明の中で、途上国・市場経済移行国の専門家の積極的な参加、気候変動の地域的特性の重視等を強調した。
ワトソン博士はこれまでに、世界銀行の環境部長、米国航空宇宙局(NASA)の地球惑星ミッション局科学課長、プロセス計画室長、米国大統領府科学技術政策環境担当補佐官等を歴任し、2002年8月現在もミレニアムエコシステム・アセスメント−生態系保全の為の条約や環境政策に関する各国政府の意思決定に必要な科学的情報を提供し、対策の促進に資することを目的とする生態系の評価を行う組織であり、2001年6月にUNEPや世界銀行の支援によって立ち上げられ、2005年3月をめどに報告書を策定する予定−の共同議長等として活躍している。
さらに、1997年9月の第13回全体会合において第三次評価報告書の骨子、スコープが決定されるとともに、ビューロー・メンバーを再編成した。
作業部会の分担についても若干の変更を行い、以下のとおり、影響及び適応策と緩和策を分けた。
・ |
第I作業部会:気候変動の科学的側面からの評価 |
・ |
第II作業部会:気候変動の影響及び適応策の社会・経済的側面からの評価 |
・ |
第III作業部会:気候変動の緩和策の社会・経済的側面からの評価 |
その後、1998年9月の第14回全体会合において、各作業部会各章の詳細のアウトライン及び執筆者等が決定された。
統合報告書を含む第三次評価報告書は、2001年9月の第18回全体会合にて採択された。(報告書はIPCCホームページで入手可能。)
TAR作成における特徴
|
Cross-Cutting Issuesについて
1995年作成の第二次評価報告書では3つの作業部会を設定し、その分野毎に評価を行ったが、専門用語の統一等、各作業部会に共通する課題が調整されていなかった。この反省から第三次評価報告書では、各作業部会の共通の課題となる部分をCross-Cutting
Issuesと称して、共通の枠組みで統一的に扱うことを決めた。これらの事項は以下のとおり:
(a) Perspective on development, sustainability and equity |
(b) Costing methods |
(c) Frameworks for decision making, including cost-benefit
analysis |
(d) Uncertainties |
(e) Integrated assessment |
(f) Scenarios |
(g) Biogeochemical/ ecological feedback |
(h) Sinks |
上記のうち(a)〜(d)については、執筆者への手引きとなるガイダンスペーパーを作成し、考え方、用語の統一などを図った。((e)〜(f)については、特別報告書などでカバーした。)特に(a)(b)については、執筆者間の相互理解を深めるため数度のIPCC
Expert Meetingが開催された。本ガイダンスペーパーは、2000年7月に完成し、IPCC公式ホームページで紹介されている。(Guidance
Papers on the Cross Cutting Issues of the Third Assessment Report
of the IPCC Edited by R.Pachauri, T.Taniguchi, K.Tanaka, ISBN: 4-9980908-0-1
http://www.ipcc.ch/pub/support.htm
参照 ) |
|
|
|
統合報告書について
第三次評価報告書では、各作業部会の評価報告書に加え、各作業部会の結果等をまとめた「統合報告書」(Synthesis Report)が作成された。この「統合報告書」は、各作業部会の「政策決定者向け要約」(Summary
for Policy maker)と、気候変動枠組条約締約国会議等から質問のあった「政策に関連する科学的、技術的、社会経済的課題」(Policy
Relevant Scientific, technical and socio-economic Questions) に答える部分で構成されている。 |
|